19.5話
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~根津side~
最近可笑しな事件が度々あるということで雄英高校校長の僕自らが調査していた。
可笑しな事件とは"敵"が不可思議な行動を取るのだ。まぁ元々道徳な行動をしないのが"敵"なのだけど、そういう事ではなくテロをしている最中にいきなり奇怪な行動を取る。時には踊り出したり、はたまた筋トレを始めたり、人質がいるにも関わらず人質を放ってトイレに駆け込んだりする。
今日も不可思議な行動を取った"敵"が出たと報告を受けてこの町までやってきた。
「普通の住宅地。これといって変わりのない町だね。」
「そうですね。土地は関係なさそうです。」
一緒に来ていたアングラヒーローのイレイザー・ヘッド、相澤くんが周りを見渡す。
「しかし周りにこれだけ野次馬がいるとなると、誰が個性を発動させたかも分からないですね。
人質になった女性は浮いた時に何かに引っ張られたようだと言ってました。
複数の人数が結託してこの奇妙な事件を起こしているのでしょうか…。」
人には個性があるが、多くても2つくらいしか個性を持てない。
なので奇妙な行動に統一性がないことから一人の行動だとは考えられないのだ。
「いや、個性をコピーする個性を持っていれば一人でも出来るだろうね。
それも透明になれる個性と浮く個性を2ついっぺんに使えているから一度にいくつも個性を発動出来るような強い個性となるね。」
様々な場合を思考するがこれと言って合点するものがない。
辺りを巡回して怪しい人物がいないか見回る。
周りに野次馬やマスコミがいなくなりもう現場にはいないだろうと諦めていた時だった。
一つの家の庭から辺りを見回しながら出てくる少女がいた。
「そこの君、」
怪しい動きをしていた少女に話し掛ける。
少女は胸辺りまでのウェーブ掛かった黒髪に黒目。身長からして小学校中学年くらいだろうか?
『あ!ねずみさんの根津だ!久しぶりだね!』
「?
何処かで会った事があったかな?」
知り合いにこんな子はいなかったはずだ。高校のパンフレットでも見たのだろうか。
少女は数年前迷っていた僕を駅まで送ったと言った。
確かに数年前隣の町で助けて貰ったことがある。
まさかこの子だとは思わなかった。子供の成長は早いと実感してしまうね。
名前は確か霊和。
霊和ちゃんは僕の隣にいた相澤くんを見つめる。
『隣の人は?』
「僕の同僚さ。」
『へぇ。妖怪には見えないや。人間みたいだね。』
「…」
霊和ちゃんは自分の隣を向いて相槌をうっている。
「校長、何なんですかこの失礼なガキ。」
「数年前に会ってね。とっても興味深い子だよ。」
「…。」
霊和ちゃんの横には今も妖怪がいるんだろう。
顔をキョロキョロと動かしていたと思ったら、何かを抱き締める格好をする。
『ごめんね、この子達が騒いで。』
霊和ちゃんの両腕の空いた空間を見る。
思った通り、何かに押されるように服にシワが寄っている。
「構わないよ。」
以前助けて貰ったお礼をしたいと言えばいらないと返された。
『私ね、ヒーローを目指す事にしたの!』
「そうかい。それは楽しみだ!君なら立派なヒーローになれるだろうね。」
こういう子ならば良いヒーローになるだろう。今まで何人ものヒーローの卵が羽化するところを見てきた僕が言うのだ。
『妖怪の皆に助けられっぱなしだけどね。』
また"妖怪"か…。
僕はこの子に会った後、個性がどんなものだろうかとずっと疑問に思っていた。
なので会話が可笑しくならないよう慎重に言葉を選びながら聞く。
「ヒーローになりたいんだよね…。
妖怪が見えているようだし、君の個性はなんなのかな?」
『私は妖怪や幽霊を見れるだけだよ。』
薄々気付いてはいたがやはりそうだったのか。
しかし妖怪など非科学的なモノが本当にいるのだろうか?
『でもジバニャンやフゥ2、他の友達妖怪もヒーローになるために助けてくれるって言ってくれて…、私はそんな皆を助けられたらいいなって…。アハハッ、勿論ウィスパーもね。』
「そうか…。
おっと、僕達はこのへんで失礼させてもらうね。また会おうね。」
『うん!またね!』
霊和ちゃんに手を振られながら彼女から離れた。
彼女が見えない所に行き、立ち止まって相澤くんを見る。
「"妖怪"や"幽霊"っていると思うかい?」
「そういうものを専門とする所がありますが、私はそんなモノがいるとは思えません。」
「ではあの子が嘘を付いているのかな。」
「…。」
そりゃ一度会っただけの人物が嘘を付いているのかわかるわけないか。
しかし僕は昔あの子が飛ぶ処を見た。
あの子の個性ではなく、妖怪があの子を飛ばしたのだとしたら…。
あの服の折れ方もあそこに見えないが妖怪がいるのだとしたら…。
見えないモノなのにしっかりと存在を確認出来ている妖怪はいるのかもしれないと僕は思った。
H30.03.26