５年生になり高学年になったからと、お母さんから遠出を許された。
それならばとフゥ２がケマモト(毛馬本)村というところに行こうと言うことになった。
電車を長時間掛けて乗り継いで着いた所は小さな町だった。そこからバスで15分ほど掛けて目的の集落へと着いた。
そこは山に隣接した地域で自然が溢れている。

『ついたー！』

「ずっと座りっぱなしで疲れたニャン…。」

「久しぶりにケマモト村に来ましたね。」

「じいちゃんいるかな～？」

ここケマモト村はフゥ２の人間の時の祖父が住んでいた場所で今は妖怪になってこの村を見守っていると聞いた。

バス停から橋を渡り学校の横を通り、数件の家の横を抜ける。
左右に田んぼ畑が広がった場所に入っていき、森の側の収納庫まで行く。

『ここにフゥ２のおじいちゃんがいるの？』

「ここは通り道。昔建てられて奥に行けないようになっちゃったんだ。」

だからここからは飛んで行くんだと言われ、私はウィスパーに、ジバニャンはフゥ２に乗って先の森の中に行った。

木の上から行くとあっという間で、森の中の空けた場所に小さな家があった。二階はツリーハウスのようで生えた木に展望台がある。すぐ側には小川が流れている。

『わぁ！カッコいい！秘密基地みたいだね！』

「じいちゃんが子供の頃に自分で造ったんだって。」

立派な建物を子供が造ったなんて驚きだ。

鍵のかかっていない家の中に入ると様々な物が置いてあった。特に気になったのが大量にある唐辛子だ。古いみたいでカラカラに乾いてはいるが軽く数千はある。
フゥ２に促されて梯子を登って二階に行く。

「んー、いないなぁ…。何処かに出掛けちゃったのかなぁ。」

「山の方ですかね？」

フゥ２とウィスパーが北の方にある山を見る。山の中にある村なだけあって山が近くに見える。

『ん？』

下からフヨフヨと黒いモノが飛んでくるのが見えた。

「じいちゃん結構マイペースなとこあるからな～。あっちこっちふらふらしてるか、…っ！？
愛と根性とガッツで世界に蔓延る悪を討つ！無敵王者ガッツ仮面！世界はトモダチ！ゼンブ守るぜ！」

「うぃす？何故フゥ２のお祖父様みたいな事を言っているんですか？うっ…！
てってて～♪てれれっ！ガッツ！」

『…』

見てて黒いモノがフゥ２とウィスパーに取り憑いているのがわかったが、言っている内容はわからなかった。

唖然としながら見ているとジバニャンにも取り憑こうとしているのが見えたので慌てて止めた。

『ま、まって！』

「ん？お前オレが見えんのか？」

『う、うん…。』

「そこに何かいるのかニャン？」

ジバニャンには見えていないようだった。妖怪ではなく幽霊なのかな？と思ったが人にしては小さすぎる。30センチくらいしかなく身体は黒くて顔は目が光っていることしかわからない。マントみたいなものを羽織っているのだろうが、それも黒くて身体と同化されている。

「ちっ。孫を脅かしてみようとしたのにバレちまった。」

黒いモノは取り憑くのを止める。するとフゥ２とウィスパーは正気に戻った。

「妖怪ガッツＫだったニャンね！」

「この年になってガッツ仮面やらされるのは恥ずかしいよ…。」

「うぃす…。」

「ハッハッハッ！久しぶりだな孫よ！」

『孫って…じゃあこの子がフゥ２のおじいちゃんなの？』

妖怪だから年や見た目は関係ないがフゥ２の祖父が小さいので驚いてしまった。しかもフゥ２より元気で茶目っ気がある。

「お前が噂の人間か。孫にもバレないように気配を消してたのによくわかったな。」

『んえ？普通に見えてたよ…？』

「霊和ちゃんは謂わば人間妖怪ウォッチだからね。どんな妖怪でも見れるんだよ。」

妖怪は人間に取り憑くことが殆んどだが、妖怪が妖怪に取り憑くこともある。しかし見られていたのでは取り憑くことが出来ないため、他の妖怪に見られないようステルス機能があるらしい。
妖怪ウォッチはそのステルス機能を消すようにも作られているため、人間妖怪ウォッチの私は始めから見えているのだ。

と、フゥ２が自分の考察を交えながら教えてくれた。

「オレは妖怪ガッツＫ。フゥ２のじいちゃんだ！そして妖怪ウォッチの開発者でもあるぞ！」

凄い人だったんだと感動する。

「あれ？フユニャンは？」

「あぁ、フユニャンなら妖怪ヒーロー協会に呼ばれてアメリカまで行ったぜ。」

フゥ２のいう"フユニャン"も気になったが、それよりも違う言葉に反応した。

『妖怪ヒーロー協会？』

「妖怪の中にもヒーローはいるんだ。フユニャンは日本妖怪のトップヒーローなんだよ。」

フユニャンと呼ばれる妖怪は妖怪ガッツＫの親友らしく、普段はケマモト村とその他を行き来している。それというのもフユニャンは浮遊霊の猫で一ヶ所には留めないからだ。