8.5話
夢小説設定
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駅へ歩きながら自己紹介をしてくれた。
『私は霊和。ネズミさんは何てお名前なの?』
「僕は根津という者さ。」
『そうみたいだね。』
足元を見て霊和ちゃんは肯定する。
霊和ちゃんが言う"妖怪"とやらが何か言ったみたいだ。
『ウィスパーって執事だったっけ?執事って何だったっけ?』
"妖怪"にも執事がいるのだろうか?
『あー、うん。…で、こっちがフゥ2で、こっちがジバニャンって言うの。』
霊和ちゃんは前の方と、僕と霊和ちゃんの間を指差す。
"妖怪"にはウィスパー、フゥ2、ジバニャンの3体いるみたいだ。
「…よろしくネ。」
恐らく霊和ちゃんがいう"妖怪"とやらも挨拶しているのだろう。少し間を開けて挨拶しておく。
"妖怪"は霊和ちゃんの幻覚なのか実物にいるのかわからない。
『根津はこれから何処か遊びに行くの?』
「いや、視察で近所に来てたんだけど、帰り道で迷ってしまい困っていたのさ。」
『視察?』
"敵"がいたと言えば霊和ちゃんは取り乱してしまうかもしれない。もう"敵"もいないのだから言わないでおいた。
霊和ちゃんは視察という言葉を知らないのか頭を傾けていたが"妖怪"が教えてくれたみたいで納得していた。
僕は先程霊和ちゃんが言っていた言葉を思い出しながら、この子が将来ヒーローになってくれればいいのにと思った。
だから質問した。
「さっき困ってる妖怪を助けたいって言ってたけど、キミは将来ヒーローになりたいのかな?」
悩んだ後、霊和ちゃんはわからないと答えた。
「…そうなのかい?子供はオールマイトみたいになりたいって言う子が多いのだけどね。」
『オールマイトはカッコイイと思うよ?でもオールマイトはテレビの中の人だもん。』
霊和ちゃんは実際にオールマイトを見たことがないようだ。テレビの中の住民だと本気で思っているようで、僕が笑って困惑していた。
駅は案外近かったようで十数分で辿り着いた。
駅の前で止まり私は頭を下げる。
「ありがとうね。お陰で助かったよ。」
『どーいたしまして!』
僕は霊和ちゃんに手を振りながら改札に向かって歩く。霊和ちゃんが手を振り返しているのを見ながら見えない所まで適当に歩く。
改札を通らないのは警察に行った教師を待つためでもあるが、なにより霊和ちゃんがこの後どうするのか気になったからだ。
もし本当に"妖怪"というものが居るのならばレア中のレアな個性になる。普段から連れ歩いていることから"妖怪"と霊和ちゃんの仲は良好ということになるし、将来霊和ちゃんがヒーローになれば"妖怪"もヒーローの仲間になるかもしれない。
"妖怪"が幻覚ならば普段から個性が発動している事になる。その場合個性が制御出来ていないことになるので、個性を制御させる塾に通わせなければならなくなる。
霊和ちゃんは何か呟いた後、ありがとうとお礼を言っている。
何かに跨がる動きをする。
彼処に何かいるのだろうか?
全く何もないように見えたがスカートが股の下を避けるように折れ曲がっていた。
霊和ちゃんは一本の棒を持つように手を握り膝を曲げると、なんと飛んで行ってしまった。
「驚いた…!"妖怪"は本当にいるのかもしれない…っ!」
空を飛ぶなど、幻覚じゃあり得ない事態に"妖怪"を信じてしまった。
是非とも"妖怪"をこの目で見てみたくなった。
皮肉なことに昔僕に実験した人間の気持ちを自分も持ってしまった。
「──…ょう、…校長!」
「っ」
僕を呼ぶ声に後ろを振り向くと、警察へ"敵"を送った教師がいた。
「どうしたんです校長。ずいぶんボーッとしていたようですが。」
「あぁ、ちょっと面白い個性の子供と会ってね。実に興味深い個性だ。
また会いたいな。」
「…そうですか。
ですが今は他のヒーロー事務所にも視察に行かないといけませんよ。時間は有限。とっとと済ませましょう。」
「もう少し興味持ってくれてもいいのになぁ。」
冷たい教師にもう少し愛嬌があればいいのにと思った。
H29.12.23