43話
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『ウィスパーに行かせてよかったの?
ちゃんと録れるかなぁ…。』
おっちょこちょいなウィスパーがカメラマンをしてちゃんと録れるか心配だ。
「録れなかったらシバく。」
『ダメだからね!』
フゥ2もジバニャンも何故かウィスパーには厳しい。
仲が良いからこそ厳しくしているんだと以前フゥ2が言っていた。男の子の友情は難しいな。
歩いて探していると、外から歓声なのかなにやら騒がしい。
拍手の音は聞こえないので試合が終わったわけではなさそうだ。
「床が揺れてるニャン!」
「勝己の個性かな?相当激しい戦いみたいだね。」
『お茶子ちゃん…。』
怪我がないといいのだが…。
いや、どうして私はお茶子ちゃんが負けると決めつけてしまっているのだろう。
お茶子ちゃんが勝つ可能性だって0%ではない。
かっちゃんがドジ踏んで場外になる可能性だってあるんだ。
希望を捨ててはいけない。
『二人とも頑張れ。』
会場の反対側まで歩いてきたがりゅーくんは見付からなかった。
「やっぱ観客席の方にいるのかなぁ…。」
「会場の外に出ていったかもニャン。」
「りゅーくんってそこまでアクティブだったかな?」
『外に出ちゃったとしたら、森の中に入ったかもしれないね…。』
雄英高校の広大な土地全ての雑草などの管理が出来るわけではないので、グラウンドや訓練場の間の土地は整備されていない。
そのため普段は木や草が生い茂って森になっているのだ。
『次の試合まであと2組ある。
まだ時間もあるから外まで探せるかな?』
「周辺だけでも探してみようか。」
時間が惜しいので走って出口に向かう。
拍手の音が聞こえ、試合が終わったのだとわかった。
フゥ2は進みながらウィスパーにいっくんの試合も撮影してね!と連絡していた。
『ウィスパーに怪我はなさそう?』
「あっても元気だから大丈夫だよ。」
「霊和ちゃん前見るニャン!」
『え…っ、うわっ!』
もう少しで長い廊下の真ん中まで行くというところで人とぶつかってしまった。
私は尻餅をついてしまったが、相手は少しもよろけずに手まで差し出してくれた。
「こんな所で走るんじゃない。」
『ご、ごめんなさい…。』
立ち上がって相手を見ると、いつだかテレビで見たことのある人物だった。
「No.2ヒーローのエンデヴァー!!?
うそっ!本物だよ!!」
フゥ2は興奮して凄い凄い!と目を輝かせる。
『何でこんな所に?ここは関係者以外立ち入り禁止のはず…。
もしかしてエンデヴァーも迷子ですか?』
「……。」
「ちょっ、エンデヴァー相手に迷子って!子供じゃないんだからその言い方ないでしょ!」
『え?
んじゃあ、場所がわからなくなった?』
「それ迷子の類義語!」
ウィスパーいないとツッコミいなくて大変だ…とフゥ2は思ったそうな。
「君はトーナメントに出ていた子か?」
『はい。
プロヒーローの席はあっちですよ。わからないようなら案内します!』
「そうか……では頼むとしよう。」
「本当に迷子だった!!」
廊下を少し戻り、観客席へと繋がる階段を昇る。
『エンデヴァーはどうして1年生の会場にいるんですか?3年生は見ないの?』
「…息子の応援だ。」
「『息子?』」
フゥ2も気になったのかおうむ返しをする。
ジバニャンは私の肩にしがみついてエンデヴァーの炎で出来た髭を見ている。飛びかかっちゃダメだからね。
『お父さんが見に来てくれるなんて羨ましいなぁ。
仲がいいんですね!』
「……。君のお父様は?」
『お父さんは仕事です。
最近忙しくて帰って来ない日もあって…。
でも仕事を頑張っているお父さんは格好いいです!』
私がオールマイトに感じた憧れとはちょっと違うけど、お父さんは私が最初に憧れた人物だ。
自分の個性を生かし仕事に繋げる凄い人だな。と感じている。
「そうか。
君の家族は仲が良いのだな。」
『はい!
お母さんとお父さんも仲良しです!』
自慢の家族を褒められて悪い気はしない。
先程までヒーローを見たいっくんのように騒いでいたフゥ2は、何か考えているようで黙って聞いている。
「先程、私"も"迷っているのか聞いてきたが、他にも迷っている者がいるのか?」
そうです。と頷き試合後からエンデヴァーに会うまでを軽く話す。
「一人では大変だろう。
他にも要員を集めるぞ。」
『いいえ。他の人達では見付けられないので、試合を観ていてください。』
「それはどういう…、」
階段の一番上までつきエンデヴァーが立ち止まったので此方も止まると、フゥ2が私の前に顔を突き出してくる。
「……霊和ちゃん、息子さんが誰なのか聞いて。」
『?
わかった。』
フゥ2の方を向いていた顔をエンデヴァーに向ける。
『エンデヴァーの息子って誰ですか?ヒーロー科の人?』
「あ?ああ……。
今試合に出ている轟焦凍だ」
『轟くんのお父さん!?』
「ニャニャッ!?
全然似てニャいニャン!!」
「そうか……だからか…。」
ステージを見ると轟くんといっくんが戦っている。
私とジバニャンは轟くんとエンデヴァーを何度も見て比べるが全く似ていない
『あ、だから轟くんも炎の個性があるんですね。』
「攻撃には使わないみたいだけどね。」
そっかそっかと親子である確認をしていると、フゥ2に時間無くなっちゃうよ。と言われ、慌ててエンデヴァーに向き直る。
『ここまで来ればもう大丈夫ですかね?』
「ああ。助かった。」
『それでは私は戻りますね!
また会いましょう!』
手を振って入り口までの道を駆け降りる。
エンデヴァーは手を振ってくれなかったが、私が見えなくなるまでその場に立ち止まっていた。
「あの子の個性は……。」
エンデヴァーはそう発するも返ってくることはなく、息子の試合を観るために"躊躇いなく"席に戻った。
階段を降りて入り口へ向かう途中、前からふらふら青い物体が近付いてきた。
「フユニャン!どこ行ってたの?」
真っ赤なマントがほつれ、顔に傷を負って疲労感漂うフユニャンだった。
「昼食時間の後、君たちの後を着いて行こうとしたんだが突風が吹いてな……。
君たちの試合には間に合って近付こうとしたんだが、天狗の技でまた飛ばされてしまったんだ。」
「そぅ…。」
「ニャン…。」
フゥ2とジバニャンは呆れた目でフユニャンを見る。
フユニャンは紙風船と同じくらい風に弱いということだよね?
『それなら…試合が始まるまで私が掴んでるね。』
上下するフユニャンの脇を掴んで懐に近付ける。
背中とお尻を支えれば子供を抱っこする時のようになった。
ジバニャンよりも重さを感じない事にちゃんと掴めているのか心配になる。
「す、すまない。
恩に着る……。」
「ニャー!ズルいニャン!!
そこはオレっちの場所ニャンよ!」
恥ずかしいのか顔を赤らめるフユニャンの顔を手で押し付け私の腕の中から落とそうとするジバニャンを咎める。
『後でするから我慢してね。』
「イヤニャーン!」
駄々を捏ねるジバニャンをあやしながらりゅーくんを探すのだった。
H30.11.08