36話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
体育祭まで残り1週間となった。
ホームルームが終わり、皆と更衣室に行こうとしたら相澤先生に呼ばれた。
「今日も演習場使うからまだ帰らないよな?
校長がお呼びだ。」
『根津、先生がですか?』
また敬称を忘れそうになり相澤先生に睨まれた。
「体育祭について色々話し合いたいんだそうだ。
校長を待たせるとそれだけ話が長くなるぞ。」
あいつら(女子)には俺が言っておく。と背中を押されて教室を追い出された。
「いつも急ですね~。」
「校長だから忙しいんじゃない?」
目をパチクリさせて呆然としていたが、いつまでもここにいるわけにはいかないと足を進めた。
雄英高校は主に4つの校舎で出来ていて、私は教室棟から職員棟に移動した。
校長室をノックするとすぐに扉が開いた。
「やあやあ待っていたよ。
お茶とお菓子を用意したから遠慮せずに食べておくれよ!」
対面されたソファーに座る。
根津は私とフゥ2達全員にお茶…ではなくオレンジジュースを出してくれた。
今からお茶会が始まるのかなと思った。
根津も向かい側に座り、小さい手(前足?)で器用にお茶を飲む。
「もうすぐ体育祭だよね。それで体育祭で君に色々と制限を掛けようと思うのさ。」
私の個性は霊視のみで、妖怪を操る事ではない。
しかしそれでは無個性と変わらなくなってしまうではないかと危惧し、根津は妖怪について色々と制限しようとした。
「君は戦闘服(コスチューム)の時以外だと妖怪メダルを使う数の制限が掛かってしまうと言っていたね。」
中学の時、根津が学校に来た時に話していた。
『ずっと図鑑を持っているわけにもいかないから、普段は6枚持ち歩いているよ。
一度に召喚出来る妖怪も6体までだからね。』
「うん。だから君が体育祭で持っていていいメダルは6枚までにしよう。体育祭の間はそれ以外のメダルはダメだよ。」
「ええ!?不利じゃない!?」
「だけどそこにいるフゥ2くん、ジバニャンくん、ウィスパーくんのメダルは持っていなくとも参加OKにしてあげるよ。」
「な、なんだ。それならよかった。」
ずっと観覧席で応援だけにならなくて良かったと安心するフゥ2。
「ま、君達がいてもいなくても意味ないからなんだけどさ!」
ヒーロー基礎学の講師であるオールマイトから授業中の事を聞いたらしい。
ジバニャンはサボり癖が酷い、フゥ2は若干の弱らせしか出来ない、ウィスパーに至っては何故いるのかわからないと愚痴を言っていたよ。と根津に聞かされた。
それを聞いた三人は憤慨していた。
「それと2つ目の制限は、自分以外の生徒に妖怪を取り憑かせるのは禁止だよ。」
『私だけ?』
「相手となる選手に取り憑かせたら簡単に勝っちゃうだろうし、何より君はあの"敵"の不可思議事件の首謀者だからね。
万が一君の仕業と"敵"にバレたら目を付けられてしまうだろう。」
"敵"に目を付けられると言っても実感が湧かなく、はい…。と曖昧に相槌を打っていたら、警察にバレたら逮捕されちゃうぞ!と言われた。
それは困るので絶対に他人に取り憑かせないよう決意した。
体育祭についての話はこのくらいで、ジバニャンが満腹になるまでお菓子を食べるのを横で見ながらお喋りをしていた。
「──…入試で君の友達が怪我を治したんだよね?」
『うん。キズナースって言って、私がお母さんから取り上げられた時に助産師さんと一緒にいたんだって。』
その時から私に怪我や病気になるたびに治してくれた友達だ。
「それってどんな怪我でも治せるのかな?」
『ん~?
どうなの、フゥ2。』
私には分からないのでフゥ2に聞く。
「俺もわかんないなぁ…。
だけど命を蘇らすとか切断した足が生えるとかは妖怪でも出来ないからね。」
フゥ2の言葉を根津に教えると、根津は難しい顔をする。
「そうか…。」
『人間の修復可能な範囲の怪我と体力なら回復出来るよ。』
「!
体力を回復出来るならリカバリーガールと足せばどんな大怪我でもすぐに治せるんじゃないかな?」
根津が言うには、リカバリーガールの個性"癒し"は怪我をした人の体力で治している。
大怪我をした場合も体力に比例して治せる限度があり、それ以上個性を使うと体力が0になり死んでしまうかもしれない。
そこでキズナースの体力回復を行えばそんなリスクもなくなる。
急激な回復が出来れば切断された腕だってすぐに接合して個性を使えば、細胞を騙して癒着することも可能だとか…。
「…って、言ってもね~。
俺達だって生活してるわけでリカバリーガールに付きっきりなんて嫌だし、妖怪に優しい霊和ちゃんだから手助けしてるんだよ。」
『フゥ2…。』
「オレっちもだニャン。
霊和ちゃんの為ならなんだってやるニャン。
でも他のヤツと一緒ニャンて嫌だニャン。」
私としては少しでも大勢の人を助けたい。しかし妖怪も人間と同様に生活をしているのだ。
人間が妖怪に強要は出来ない。
私が困った顔をしていたのか、根津も否定されたのを理解した。
「ならある人物の体力だけでいい。
満足に生活を送れないアノ人を回復してくれないかな?」
『満足に送れないって、それも怪我で?』
「うん。とても良い人なんだけど大怪我を負って辛い毎日を送ってる。
歩けないわけでも喋れないわけでもない。
見た目は普通に暮らしているように見えるんだけど、それは強がっているだけで身体が悲鳴をあげているんだ…。」
大怪我をした本人でもないのに根津は痛い顔をした。
強がって周りに元気なフリをするその姿に、根津は心を痛めているのだ。
『フゥ2…!』
妖怪の行動を強制することは出来ない。
だけど困っている人が目の前にいるのだ。
根津を、友達を助けたい。
「…ハァ。
こんな話聞かされたら俺も助けたくなるよ。」
『それじゃあ…!』
「あくまでも回復するのはキズナースなんだから後で話しなよね。」
『うん。うん…!
ありがとう!』
嬉しい衝動で隣で浮いていたフゥ2を抱き締めた。
いきなり何するの!女の子なんだから気をつけなさい!と叱ってくるフゥ2の顔は赤く、照れているのだと理解した。それでも嬉しいので離さないけどね。
私がフゥ2から離れたのは、ジバニャンが私とフゥ2の間に入り込んで来たので自然と離れた。
「賛成してくれた。ってことでいいのかな?」
『はい!
最終的には治してくれる子が承諾しないとだけど、フゥ2が頼んでくれれば皆やってくれるからね。』
「別に俺が頼んだってやってくれるわけじゃ~…。」
元妖怪ウォッチ保持者だったから妖怪達の信頼は厚い。
まだ妖怪と暮らして15年の私とでは全く違う関係なのだと、一緒に過ごしていて予々思う。
「それでも希望を持てたのだからありがとう。」
根津はホッとしたような、それでもどこか辛い顔をして私の手を握った。
H30.07.26