因果の形を変えても救えぬ物もある

・・・それで話は一区切りついたということからジェイドはもう後は気持ちや考えに整理をつける時間を取れとガイに言い、船室の方へ向かう後ろ姿を見届けた。






「・・・あの様子では簡単にバチカルまで行こうという感じにはならないかとは思いますが、しばらくは経過の観察はしておく方がいいでしょうね」
・・・そうして一人になったジェイドはそっと漏らす。ガイについてを信用出来ない旨を。
「しかし今になって改めてまた公爵に対する殺意を自覚することになるとは・・・それだけガイにとっては根深い問題であったということもですが、単純にあの会談の時は問題がファブレだけにないと知ったから一時的に殺意が引っ込んだだけだったんでしょうね。そして久しぶりに会ってその事を自覚してしまった・・・と」
更にガイの復讐への気持ちは表面的に奥に引っ込んだだけなのだろうというように漏らした上で、疲れたように首を横に振った。
「・・・白蘭とやらの意図は分かりませんし本当にそんな人物がガイの夢に介入したのかは不明ですが、結果的にもうガイの事を手放しに信用出来ないというように知れたことだけでも良しとするしかありませんか。さっきの話の手前ではあのような言い方をしましたがナタリア達はまだしも、ティア達にまだ復讐心に区切りがついていないことを話せば、十中八九今度こそ心から納得する決着をつけろと言い出しかねない可能性があるからあまり伝えたくはないんですよね・・・」
そんなガイについてを先に知れたことについてはまだしもと、先程の話の中でティア達を引き合いに出したことについて微妙そうな表情を浮かべた。






・・・三年前は何だかんだで表向きは冷静そうに務めはしてはいたが、ジェイドもジェイドで中々にいっぱいいっぱいな部分が大きかった事から他の仲間達に関してそこまで深く考える事はあまりなかった。だが三年の時が経ってかつてを思い返していく内にティア達についてを考えていき、ある考えが浮かんだのである。それは妙な感じにポジティブシンキングな部分が大きかったという物だ。

これに関しては三年前に共に旅をしていた際に直面する問題に関して、変に及び腰になるようなことを避ける為に皆が皆ハッキリ話し合うことや示し合わせるようなことはなかったものの、揃って出来る限りはやれることだというように言う事が多かった・・・この事に関して何故かというのは今となってはジェイドは少なからず理解している。それはそういったように行動しなければ自分も含めた仲間という呼び名で繋がった集まりが、瓦解する可能性が高いと誰もが言葉にせずとも感じていたからだった。

今更という話になるしこの三年でジェイド達はオールドラントを滅びから遠ざけた英雄というような感じに見られることになったが、リアルな当時の人間関係はとても友好的な物ではなかったと今は言えた。それこそきっかけが一つあれば自分達の関係は終わりを告げていた可能性は高かったと。だがそれでもそんな関係が続いた理由は単純に、それでもやることをやらなければ後々で自分や仲間達を含めたオールドラントそのものが滅ぶ可能性が極めて高いことが分かったからだった。

そしておそらくなどという言葉を使うまでもなく自分達が瓦解していたなら、今頃オールドラントはまともな形で存在していなかっただろうとジェイドは思っているのだが・・・だからこそ前にガイが公爵に剣を向けてそれを引いたのを見たのもあり、今度もそうやって事実に向き合って乗り越えるべきだとティア達が言いかねない可能性が高いと見たのだ。かつてのように出来るだろうと。

しかしもうそう出来る可能性というかガイが殺意を捨て去るだけの説得材料などがないというのがジェイドの見方であると共に、もしもの可能性に賭けてそれこそ我慢出来なくなったからと公爵を殺してしまう事になればとんでもないことになってしまう・・・だから下手にティア達に話をされて背中を後押ししかねない事を言われるより、ティア達には反対される可能性が高いと認識させる事で話自体を持っていかせまいとジェイドは誘導したのである。下手にとんでもないことにしてしまわないようにと。









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