因果の形を変えても救えぬ物もある

「突っ込んだ話と言っても夫人が憤死したという部分とファブレが取り潰しになったことについてに付け加えさせるような感じになりますが、もうそこまで来たらナタリアとアッシュも今私達の知る二人と違う事になるだろうと私は言いたいんですよ」
「えっ・・・あの二人が?」
しかしそこで二人が違う事になると言うジェイドにガイはキョトンとした様子を浮かべる。意味が分からないというよう。
「話の中で出たでしょう。ファブレが取り潰しとなったならまずアッシュはインゴベルト陛下がその身を預かるというような形になるだろうと。そしてその事を踏まえるとアクゼリュスの預言についてをどうにか達成させる為にアッシュを犠牲にするかどうかは微妙なラインでしょうが、どちらにしてもある程度大きくなったらあの二人がマルクトもそうですがガルディオスに対していい気持ちなど抱かないどころか、敵意を抱いている方が当然というようになっていたでしょうね」
「なっ・・・そんな、どうして・・・!?」
「どうしても何もないですよ。ファブレという王族に繋がる大貴族が滅ぶ原因となったんです。そしてアッシュからしてみれば夫人は違うと言えなくはないとしても、父親である公爵を殺したのはガルディオスなのは間違いないんですからね。そうなればインゴベルト陛下や周りの人々がどういったように話だったり教育をするかにもよる部分はあると思いますが、少なくともナタリアとの婚約がある以上はインゴベルト陛下の義理の息子とすることも出来ないでしょうし、ホド戦争で勝っただとか名誉の戦死だというように言うことも流石に出来るような戦果とはとても言えませんからね・・・そう考えればアッシュにもそうですしナタリアにも本当の事を話すのは避けられないでしょうが、アッシュもアッシュで怒りを覚えるでしょうしナタリアはより激しく怒ることでしょう。アクゼリュスの救援をもし頼んだとしたなら、マルクトやガルディオスの為に協力など有り得ないと言い放つくらいにはね」
「そ、そこまでになると言うのか・・・あの二人が・・・!?」
「・・・ガイ、いい加減この話題の前提を間違えないでください。この話題ではホド戦争の結果は逆転していてファブレはガルディオスに滅ぼされたのであって、この話題に限っては貴方が抱いているような感情を持つのに相応しいのはアッシュ達の方になるんですから」
「っ!?」
だが二人の立場について話を進めてもまだ理解どころか考えるにすら至らず困惑を抑えられない様子を見て、話題の要点は逆転だというようにジェイドが呆れ気味に言った所でようやくガイもハッとしたように目を見開いた。
「・・・貴方がそういった風になるのは貴方自身が滅ぼされた側としての怒りを持っているからというのもあるのでしょうが、あの二人の今の人柄もですが事情を知っているからそんなことないと信じたいのでしょう。ですがその時の二人がそんなことになるとは到底思えません」
「そ、それは預言の中身を言えば何とかなるんじゃないのか・・・?」
「言ったところでアッシュの性格から考えればファブレを滅ぼしたマルクトやガルディオスの言葉など信じられるかとなるのは目に見えていますし、ナタリアに関してはそれが本当だと言うなら何故言葉を尽くすだとか被害を抑えるようにだとかもですが、何より叔父様を殺す必要などなかっただろうと声高に叫ぶのが目に見えています。今もまだ甘さは残ってはいるでしょうが、昔の彼女はそういった預言の裏側だとか人の悪意に満ちた考えについてを深く考えられるような経験は皆無と言っても過言ではありませんでした。そんな彼女に対して預言の中身を言って理解してほしいというように説得しても、なら叔父様達に止まって欲しいと言えば良かったでしょうと激昂しながら返すのは明白であって説得などまず無理だと思いますよ」
「そ、そんな・・・」
ようやく少しは理解したといった様子に二人がマルクトやガルディオスを信じる事など無いだろうと特にナタリアの性格からを考えた推測を語るジェイドに、ガイも反論出来ずに愕然となるしかなかった。言えばよかったと言葉にこそするが、言葉だけではどうしようもなかった事を話そうとしても出来たことだろうとまず受け入れる筈もないナタリアの性質を改めて認識したことで。









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