因果の形を変えても救えぬ物もある

「・・・はぁ・・・」
・・・部屋に備え付けられたベッドに腰掛けながら、ガイは一人のみの室内ということもあり憂鬱という気持ちを隠さないままに深くタメ息を吐いた。
「・・・割り切ったつもりだったのに、まだ俺の中にはファブレに対する怒りが残っていた・・・そしてそれを自覚したのはもう今となっちゃ『ルーク』に戻るしか無くなったアッシュをバチカルに送った時だった・・・正直、あそこで剣を抜かなかったのが今となっちゃ不思議なくらいだ・・・」
そうして自分の拳を握り開きしながら、ガイはどうしてこうも沈んだ気持ちになったのかを独り言を口にしつつ思い出す。






・・・かつて戻ってくると約束した友が戻って来ず、その友の成人を祝う儀には参加せずかつての仲間達と共に時を過ごす中でもう友は戻ってくることはない・・・そう仲間達が感じる中、友は戻って来た。だがそうして戻って来た友は最早友と呼べる存在ではなくなってしまった・・・友を生んだ元である被験者である存在のアッシュと大爆発という現象を経て、一つの存在に戻ることで友であったルークの存在を乗っ取ったことにより、もうルークの人格や肉体といった物は二度と戻って来なくなったことによりだ。

そう知った当初はどうにかならないかのかとガイは漏らした。だがそもそもの状況からしてアッシュは死んでいてルークも帰って来るようにするとは言いはしたが、もう生存などほぼ望めないような状態だった事を知っていた事から、こうして二人が一人に戻って生きて帰ってきたということ自体が奇跡でしかないが、だからといって逆にまた一人を二人に戻すなんてことは奇跡が起きても有り得ないし到底とかそういったもしもが有り得る問題じゃなく、絶対に出来ることじゃない・・・そうジェイドから言われたことにより、ガイを含め仲間全員がルークとアッシュの二人が戻って来ることはもうないのだと悲嘆に暮れる事になった。

そんな一同にこうして二人が一つに戻って帰ってこれたことまでもを否定すれば、こうして一人になって戻って来た彼までもを否定することになる・・・というようにジェイドが複雑さを滲ませていた『ルーク』を見つつ言ったことで完全にとは言わずとも場はそういうことならと収めることにし、一同は『ルーク』を連れてバチカルに行こうとなった。事情の説明と共に『ルーク』が戻るならバチカル以外にないというように話がまとまってだ。

故に全員が全員完全には『ルーク』に関してを割り切れないままにバチカルに行き、『ルーク』の事を説明する場面で久しぶりにファブレ公爵を目にしたことにガイは心が大いにザワつくのを自身で感じつつ、それを必死に表に出さないようにと抑えていた・・・三年前の首脳会談にてガルディオスを滅ぼした真相についてを知らされたことにより、復讐をすることはもう出来ないとその時に考えて剣を下ろしてから、顔を合わせる事がない生活を送ることになったが故に公爵やファブレに対して何かを深く考えることはなかった。ガイはそこから英雄といった立場になると共にガルディオスの復興の為にと様々に動くことになり、ファブレの事についてを済んだことだからと気にするような暇が無かった為に。

だが三年経って久しぶりに見ることになった公爵の姿に、再び怒りや殺意が浮かんで来たことをガイは瞬時に理解した上で必死にそれを抑える事に専念した。その結果として十数年という期間をファブレ邸にて雌伏の時を過ごしてきた経験もあって、何とかそれらを見せることなく済んだのだが・・・嫌でも理解せざるを得なかったのである。自分は本当の意味で公爵を許したのではなく、単に心の奥底にそれらを押し込んでいただけのような状態だったのだと。









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