愛は免罪符たり得ない

「最も、僕としてもルークがあそこまでの様子になるとは思っていなかったが・・・あれはあの二人がルークの考えや気持ちを踏みにじる行動を取ったからこそあぁなったのであって、踏みにじった側である二人は踏みにじられていないからこそそんな気持ちなんて持てない・・・というだけの単純でこそはあるが、それが故の隔絶な差を生んでいると僕は見たんだ。アッシュは勿論の事だが、自分は踏みにじった側だというのにさも自分も踏みにじられた側なんだといわんばかりの態度を取るナタリアもな」
「待ってくれ、リオン君。ナタリア君が自分も踏みにじられた側というのは・・・」
ただと自分も意外と言いつつ自身の考えを話していくリオンに対してウッドロウはその中身に不安げにどういうことかと問い掛ける。まるで自分も被害者だとナタリアは思っているといったような言い方に。
「ナタリアからすればルーク達の判断はそんなことをしてほしいと思って行動したわけではないのに、そんなことをするなんて酷い・・・というような気持ちになるということだ。自分が原因であるしルーク達に多大な迷惑をかけたのに、その対価を支払わせるとなった時に何故そこまでするんだ・・・というようにな」
「あぁ、確かにリオンの言う事は頷けますね。これはアッシュとルークの事に関してを思い出していただければ皆さんも納得するかと思いますが、要はアッシュがルークを嫌って攻撃するのを身を張って止めるでもなく、ただ何でこんな風になるのかとさめざめ悲しんでいるといった様子を度々見ていたと思います・・・あれは一見すればどうして二人は仲が良くならないのかと悲しんでいるだけと取れますが、私が言うなと言われることを承知で言わせてもらうならばあの時はルークを守ることもですが、アッシュを諌めるのがナタリアが取るべき行動でした。ですがアッシュに嫌われないためというのを言い訳にしようが、アッシュを止めようとしなかったどころか今となってはあのように結婚式を覆してしまうようにしてしまったことも踏まえれば、あれらはアッシュの味方となってルークを攻撃することを黙認したも同然の行為と言えるんですよ。そしてナタリア当人はそんなつもりはなかったと涙ながらに言うでしょうが、それこそがリオンの言ったように踏みにじった側だというのに踏みにじられた側だといわんばかりの態度という表現はピタリときたと私も思えましたね」
「「「「っ!!」」」」
リオンはその声にまた自身の考えを言葉にしていくが、ジェイドも納得しつつもその話を補完するかのようにしていった言葉を受けてリオン以外が一斉に息を呑んだ。二人の言ったことについて納得もあるが、とてもナタリアの為にもどうにかと否定出来るような材料が一片もなかった事もあってだ。






・・・アドリビトムで共にルーク達と活動してきたこの場にいる面子全員少なからずナタリアとアッシュが想いあっている場面を見ただとか、聞いたことは少なからずある。だが本来ならそれらを指摘していたであろう気質のあるエステルですらそれをしなかったのはアッシュ達とゴタゴタになるのが目に見えていたのもあるが、ナタリアに対して同情的になっていた面も少なからずあったが為だ。立場的に許されない恋をしていることもそうだし普段の勝ち気な態度がルークとアッシュの事になった瞬間、まるで別人かのようにシュンとなる姿に流石にエステルでも迂闊に触ってはいけないことだとなったのである。王族だからこそ分かる一朝一夕に解決しない問題だと理解したのもあってだ。

だからアドリビトム内でのアッシュとナタリアの関係については見て見ぬふりをすることを示し合わせた訳ではないが皆してきたのだが、そんな姿を見てきた上で先の結婚式の事が起きたからこそ場にいる面々はリオンとジェイドの言葉を否定出来ずに納得してしまったのである。アドリビトムにいる時までの頃ならまだしもあの結婚式の事が起きたからこそ、ナタリアはルークの事を踏みにじる側に回っていたのだということに。









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