愛は免罪符たり得ない

・・・ただここで話には出ていないが、ルークとアッシュの二人に関してどちらに王位を継がせるのかについてを見定めようとする機会を設けたことがあった。本来なら余程のことがない限りは兄弟の上の方が跡目につくことが普通であるのに、様々な事情が重なったことでだ。

だがその機会に関しては色々な事が重なり結局どちらになるかは決められることはなかったが、少なくともルークが絶対に王位を継ぐ訳ではなかった上で・・・もしアッシュが王位を継ぐべきとその時になっていたなら、インゴベルトは自分で甘いだとか都合がいいと思いつつもナタリアをアッシュの婚約相手にしていただろうことは予測がついた。そうなっていたらナタリアが次の女王の座につくことを望む貴族達の後押しも受け、特に反発も起こらなかったことだろう。

しかし現実はそうではなくなり、二人の王位についてはもうルークのままでいいとなってピオニーと限られた一部を除き、インゴベルト達は何もしないでいこうとなったのてある。ナタリアが特に婚約や結婚に対して不平不満をインゴベルトに訴えてこなかったことから、もう後は流れに任せていれば大丈夫というように見る形で・・・ しかしその結果が前日の結婚式であり、ピオニーからの言葉については今更言うなという思いも無いわけではなかったが、それ以上にインゴベルト自身ももうナタリアを甘やかして庇うなんて出来ないと感じたのである。一応十年我慢すればアッシュ共々玉座につけるという事になるのが甘くないと言えるのかと言われることも承知の上だが、そこはピオニーに後は頼んで自分は何もするつもりはない。もう退位した自分はアッシュは当然として、ナタリアも助けを求めても何も助けることはしないと・・・






「・・・まぁそこら辺に関しては俺に任せてくれ。あの二人というかアッシュはナタリアを捨てられないとまず間違いなくライマに残ることを選択するだろうから、それならと先に話をしたような条件で抑制していく。ただアッシュはどうせルークに対する八つ当たりに逆恨みを表す事から、シュザンヌ夫人には酷な役割を担ってもらうことになるがな」
「そこに関してはクリムゾンが話したとの事だが、シュザンヌも了承してもらっている。自分の体調が安定しないからだとか理由はあっても、二人の仲の改善が出来なかった事に加え結婚式でのあの行動についてを知った事から、シュザンヌもどうにかしたいと考えていた時だったから、もういなくなったルークの事を罵るような発言やら行動をしたなら、その度にナタリアとシュザンヌの元に引き立ててそれらをぶちまけさせる・・・という事にすることはな」
「夫人としても辛いことになるのは確実だろうが、アッシュの行動の抑制にこれ程効果の出る対策は考えられんからな。流石にいくらアッシュでもナタリアや夫人を悲しませるような事は何度もしないというか、どちらかから涙を流されればもう誰かのいるところでルークを罵倒を始めとした行動を止めざるを得ないだろうしな」
「・・・勿論シュザンヌにも心労はかかるが、それも我々に責任があると言ってくれたからとの事だからな。今後アッシュが何か起こせば頼らせてもらうことになるだろう・・・ルークにはもうこれ以上面倒をかけさせぬ為にもな・・・」
そうして以降の事についてシュザンヌの事を主に挙げながら話をしていく二人だが、インゴベルトがルークに対する想いを複雑そうに口にした事にピオニーも何とも言いがたげな様子で頷くばかりであった。もう余程のことがなければライマに戻ってくることのないルークへの気持ちを滲ませ・・・









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