愛は免罪符たり得ない

「単純な話としてアッシュに転がり込んできたピオニーの後の玉座の件は例え十年の期間の我慢という条件がつくとはいえ、ルークがそなたらと離れたいと思ってからの物だ。その玉座を当然の物と受け入れるなどこちらとしても気分が良くないというのはそなたも今までの話から分かるだろう」
「そ、それくらいは分かりますがあれが出ていったのと何の関係があるのですか・・・?」



「ルークが出ていったのはそなたらと顔を合わせられなくなったというのも確かだがそれだけではなく、そなたらにピオニーの跡を継ぐ立派な王と女王になってほしいと思って身を引くという気持ちがあったからだ。つまり・・・ルークはあれだけの事をされてもそなたらに対する気持ちがあった上で、そなたらの為にと身を引いたのだぞ」



「「っ!?」」
・・・だが更にインゴベルトが衝撃の事実をアッシュとの会話の中で口にしたことに、ナタリアも共に更に驚愕するしかなかった。ルークが自分達の為に身を引いて王位だったりを任せようとしていたということに。
「言っておくがこれは嘘ではないというより、そもそもを言うなら今回の件は本来はそなたらは我慢すれば十年後に玉座に座れるなんて事は到底出来ようもないどころではない・・・一応立場としては王族であるから死罪は無いにしても、余程でなければ外に出ることも許されずただ子を作るくらいの生活を強いられるくらいは覚悟しなければならんことだった。王位継承権において上の位にいるのはルークであることに加えて、あんなことを仕出かしたのだからな・・・例えナタリアはわしの子だということや反対する貴族達の声があったとしても、そうすることが本来なら妥当と言える処置だったのだ。だがそれをどうにかしたいと思ったのがルークであり、そなたらを見えぬ所に置くより自分が消えることでそなたらに日の目を見るチャンスを残したのだ」
「「っ・・・!」」
そのままインゴベルトはそもそもとしての二人に対する処置として本来なら取るべき事に加え、ルークがそれらを覆した・・・そう語ると、二人は信じられないというように唖然とした。
「・・・アッシュよ。そなたはルークと仲良くしたいと思わんというのは今更だからもういいが、ならルークがそなたと同じ様な気持ちでそなたを嫌っていたと思うか?そなたの主観でよいから答えてみよ」
「そ、それは・・・す、少なくとも俺よりは劣っても、向こうも俺の事は気に食わないだろうとくらいにしか思っていませんでした・・・あれの事なんか深く考えたいと思ったことはありませんでしたが、それでもあれの立場から考えれば俺のことを嫌うのは当然ではないかと・・・」
「だがそなたがそうだと信じたくはなかろうが、ルークは我慢出来るならという条件付きではあるがそなたらが玉座につけるようにという配慮をしてライマを去ることを選んだ。あれだけの事をしたそなたらに対して苛烈な罰を与えて自分から遠ざけるのではなく、自分が去ってそなたらをくっつけると共に我慢する必要があるとは言え玉座につける道筋を作って残した・・・これらの行動のどこにそなたを嫌っていると言えるような要素がある?少なくともそなたがルークと同じ立場に立ったなら真逆の行動・・・よくて二度と表に出さぬような形での軟禁か、悪ければそれこそ自分の溜飲を下げるには死んでもらう以外にないとそなたは激昂していたことだろう。そう考えれば頭ごなしにそんなことはないと否定出来ぬのではないか?」
「そっ、それは・・・それは・・・」
「アッシュ・・・」
そこでインゴベルトはアッシュ個人へと投げ掛けるようにルークの事についてを話していくのだが、その話の中身に必死に否定を返したそうに言葉を探すアッシュとその姿にナタリアは悲しげな様子を浮かばせるばかりだった。ルークはアッシュの事を嫌ってないのだと認めてしまえば自分がただ哀れな存在にしかならないということになるから、何とか反論の芽を見出したいというだけの行動に。









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