愛は免罪符たり得ない

「まぁ色々とその辺りについては話していくが、第一に俺がそうするとなったのは単純に俺以外に王位に就けるだけの経験に年齢を経た王族がいないということからだ。かつては分家筋も含めてある程度数はいたが今となっては退位や引退といった形を取る二人と病弱なシュザンヌ夫人以外では、俺とお前ら二人にルークといった四人しかいないことになるが、だからこそ分家筋ではあるとは言え俺しかいないという事になった訳だ」
「「・・・」」
それでまずはとピオニーは自身が何故そうなったのかの一つ目の理由を話すが、まだ動揺覚めやらぬといった様子ながらも二人もそこは納得出来るというように小さく頷いた。自分達のやらかした事についてが大元というのを抜きにしても、経験やらを考えればピオニー以外に適任がいないことに。
「それで続けて第二の理由が何かと言えば、俺の息のかかった者達を俺もだがどちらかと言えばお前らに近い位置に置くための物だ・・・これに関してはインゴベルト陛下や公爵の信望者といった存在は本家筋だからといった外的要素も含めても存外に多いこともだが、全員が全員二人の意に沿うというような考え方とは真逆な考え方をしている者も少なくない。二人がそこまですることはないし、お前らがそんな処置を取られるのは見ていられないというような考え方はな」
「っ、だからそういった者達を俺達から遠ざけるためにも、叔父上達は退位してそちらに王位を譲るということか・・・」
「大まかに言えばそういうことだが、ライマは小国だからあまり人員は数は多くない上にごっそり全員の首をすげ替えるような配置換えは却って反発を生むだろう。だからお前らの周囲によく俺が言い聞かせた面々を配置することを第一にし、後はそういった奴らをお前らに近付けない事を優先した配備を取ることにさせてもらう。これに関してはそうされた奴らは不満を露にしてくるだろうが、何故最低十年という期間を経る事が条件なのかというのも併せて一番重要な理由である、第三の理由で黙ってもらう予定だ」
「「っ・・・」」
そのままピオニーが第二の理由と続けていく話にアッシュが一人言のように苦々しく納得する中、核心は第三の理由だというように告げた事にナタリアも共に緊迫したよう息を呑んだ。貴族達の配置換えもだが十年という期間が罰につくのかという理由が明かされる事に。
「じゃあ気になっているようだから第三の理由についてを話すが・・・」



「最低十年という期間をお前らがちゃんと我慢すれば、お前らにはライマの王座に就いてもらう事にするからだ。いわばお前達が本当にあんなことを起こしたことを過ちと認識し、あんな事態を引き起こさないかを試す為の試金石の時間という訳だ」



「「っ!?」」
・・・だがピオニーから口にされた第三の理由についてに、予想だにしていなかった中身だったことに二人は驚愕せざるを得なかった。あんなことをしたというのにといった驚きも勿論あるのだが・・・
「お、お待ちください・・・それでは、ルークはどうなるというのですか・・・!?」
ナタリアはそこで何とかというようにルークの事を口にした・・・そう、本来ならナタリアと結婚する筈だったルークが次期王座に就く筈ではという疑念があったからである。



「ルークに関してはもう本人には話してあるが、王位継承権を辞退はおろかもうライマの王族であることも辞めるということで話はついている。だからお前らに対して取る処置も含めて発表する際に貴族達にもそう伝達する予定だ」



「「っ!?」」
・・・しかしもう決まったことだとあっさり告げたルークの事についてに、二人は更なる驚きを浮かばせるしかなかったのだが、その様子にインゴベルトが悲し気な様子を浮かばせていたことになど気付けなかった。今の二人に周りの事を見る余裕など全く無かったために。









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