愛は免罪符たり得ない

「・・・エステリーゼもウッドロウから言われてそこまで言わなくてもいいということに気付いて失言したといった様子になったらしいが、ただそれは本人からすればやらかしたというようには感じてもエステリーゼには何の問題もないどころか、むしろ何もなければ黙っていてくれたんだと考えればお前達は感謝しなければならないくらいのレベルの事をしていたんだ。ここでエステリーゼの事を責めるというのはハッキリ言って筋違いだと言っておくが、問題はそこではなく・・・十中八九なんて言葉ではなくウッドロウやエステリーゼ達も含めて、来賓の者達は結婚式で起きた事についてを国に帰れば各々の国の上層部に伝える事は確実だということだ・・・あんなことが起きた事についてを余さずな」
「「っ・・・!」」
だからこそ来賓達の口から何が起きたかを国に帰ったら言われる事になる・・・そう言われて二人はまた盛大に息を呑んだ。
「・・・これだけでも分かるだろう。ライマはまんまと見せてしまった訳だ。お前達が勝手に起こしてしまったことについてもだが、そんなお前達に決起させてしまうようなことをみすみすさせてしまった愚かな国だというような姿をな」
「「っ!!」」
だがピオニーは呆れを伴わせながら何が結論なのかというように言うと、その言葉にたまらずに体を盛大に揺らした。明らかにそんなことになるとは思っていなかったというよう。
「・・・お前達がどんな心境や考えからあんな行動を起こしたのかについては、色々と話し合ったのもあって想像はついてはいる。大方親達が決めた婚約について不平不満をその親達にぶつけようが、役割なんだからと一蹴されるだけで何も変わらんどころかそんな気持ちを抑圧されるような結果にしかならないだろうから、もうあそこであぁすると共にやることはやっていると示す以外にお前達が結ばれる道はないと考えたのだろうということはな」
「「っ・・・!」」
ただそこで改めて何故そんな行動を取ったのかについての推測を口にしていくピオニーに、二人は苦み走った顔を浮かばせるしかなかったが・・・余裕のない二人にはインゴベルトもそっと苦そうな表情になっていることに気付いていなかった。






・・・王侯貴族の間で決まった婚約というものは余程の何かが起きなければ、破棄されることも撤回されることもない。これは子ども同士の口約束程度の破っても大して影響のない物とは違い、言ったことをコロコロと変えるような事をすればそうした王族や貴族の信頼に関わるからだ。言っていることを簡単に破るような信じられない人物だと言われれば、それだけ面倒でいて厄介なことが増えることからと。

まぁそれでも自分は何も言ってないだとか中立な立場だと嘯くなどしてダブルスタンダードな姿勢を取る者もいるが、そういうように言葉にされてしまえば言った側もだが言われてしまった側・・・いわば親から婚約をしろと言われた側である子どもの立場の者も責任を負わねばならなくなる。そしてそれを拒否することは王侯貴族としての立場に甘んじているからこそ、反対することや決めたことをどうにかすることなど許される筈もなかった。

だが二人はそれでも自分達が結ばれたいと思って行動しようと決めて、いかに反対されようが公式の場・・・それも最後の最後となる結婚式という場でハッキリ自分達の意志でやったことと、もう取り返しのつかない状況にすることにしたのである。ただそうしたことが余程の結果を生み出した事についてを今教えられて、相当な困惑をしている訳だが・・・










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