愛は免罪符たり得ない

・・・ラザリスの驚異も収まりルミナシアの滅びが避けられてから一年程の時間が経って、ライマでは滅びを止めた際のメンバーの一員であったルークとナタリアの二人の王族の結婚式が行われようとしていた。当時の仲間であった面々も何人か招待される形で出席してだ。

そんな中で盛大に結婚式は始まるかに思われたのだが、ルークとナタリアが現れた瞬間に場にいたアッシュがルークの横に立つと同時に、その体を払いのけて倒れさせたことに一同はどよめきを浮かばせたのだが、続いた言葉は更に一同をどよめかせてしまった。



「・・・この度集まりいただいた面々には申し訳ない。だがもう俺は迷わん!ナタリアと結婚するのはこの俺だ!」
「皆様、すみません・・・式が近づいてもどうしても私、アッシュへの想いを捨てることは出来ませんでした・・・ですがアッシュにその事を伝えましたら自分も同じ気持ちだからそれを伝えようと言われ、私も決心致しました!ですので私はルークとではなくアッシュと結婚致します!」



・・・迷いの一切見えない互いが互いを愛して結婚するという宣言。そしてそのまま誰に聞かれることもないまま勢いそのままに、アッシュとナタリアは深い口付けを交わした。

だがこの結婚式は本来ルークとナタリアの為の物であってルークもそうすると了承した身であるのだが、いきなりアッシュが現れてこれが二人の答えだというようルークを置いてきぼりにして愛の告白をするような場ではない・・・そんなことから場はどよめきに満ちていき、この事にたまらずインゴベルトは場を収める為にルークやアッシュ達に何人かと共に退出せざるを得なくなり、結婚式も中止とならざるを得ない事態へとなってしまった・・・

















・・・そんな王族の結婚式で前代未聞の事が起きてしまってから数日が経つのだが、一応表向きはその事についての混乱は収められる事になった。ただ本当に表向きという形でだ。

それでそんな混乱を起こした張本人達はその数日の間をほぼ軟禁といっていい形で過ごすことを強要された後、王であるインゴベルトの私室へと来るように言われて二人で向かった。






「・・・お父様にピオニー様?どうしてお二人が並ばれているのですか?」
「今回の話は俺が主導して行うことになっている。何故なのかについてはすぐ話してやる」
「わ、分かりましたわ・・・」
・・・それで二人が部屋に入ると待ち受けていたのはインゴベルトと、その隣に王族ではあるが遠縁であってインゴベルトとの血の繋がりを感じさせないピオニーだった。
ナタリアは何故と戸惑い気味に二人が揃っているのかと聞くのだが、常日頃見せない真面目に引き締まった表情で答えを返すピオニーにアッシュ共々困惑しながら頷くしかなかった。
「まぁまずここにお前らを呼び出したのは何なのかそれについてを話すことにするが、その用件は数日前の結婚式の件であることに関して・・・ということくらいは想像は出来ているだろう?」
「はい、それは・・・」
「結構。それで本題に入る前にもう一つ質問をするが、現在ライマの上層部がどういった状態になっているかというのはこの数日で想像したか?お前らの行動からどうなったかをだ」
「「っ・・・」」
そんなピオニーは真剣なままに話を進めていくのだが、その雰囲気が一層ピリピリしていく様子で投げ掛ける言葉にナタリアだけでなくアッシュも気圧されるよう息を呑んだ。常なら誰が相手でも堂々と、それでいて下に見た相手なら威圧的に接するアッシュもだ。









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