崩壊の後の再生して混同した世界

シンク「多分あいつの親も含めて、そういった楽しみや燃えるって気持ちがウェイトを大きく占めている事に気付いてる奴はあいつの周りにいない。いや、いても多分あいつらしいって見られるくらいで終わってるだろうね。下手すりゃ親も含めて、同じ穴のむじながいることすら有り得るだろうし・・・それで結果が出て、事件が解決するんならそれでいいって見られる形でさ。でもね・・・ならあいつが自分の目に見える範囲、耳に聞く範囲全てで事件が無くなったらあいつは嬉しいとか当然って思うより喪失感みたいな物を抱くのは確実さ。自分の役目がなくなる事もそうだけど、こうやりたいと思うことが無くなるも同然なんだからね」

ヒム「だから矛盾って言ったのか。正義であろうとするために、悪を求める・・・楽しみとか色々な物も含めた上で分かりやすく言うなら、そんな感じの気持ちがあるとお前は見たと・・・」

シンク「そうさ。どこかで聞いた言葉だけど、悪から生まれた秩序を正だと言うと、正から生まれた悪は卑・・・だったかな?その言葉って確か正しい筈の存在に属する奴が起こしてる悪い行動に対して向けた言葉だったけど、あいつは正しいのに悪を求めるって卑・・・卑しい気持ちがあるのさ。勿論あいつを見たから分かるが、あいつ自身はそんな事を自覚した考えを微塵も持っちゃいない。だがあいつは本能的な意味で悪を求めて、そしてそれを求める気持ちに呼応して事件やらなんやらがあいつに寄ってくる・・・恵まれてるとは言ったが、そういった部分まで恵まれてるんだろうさ。あいつはね」

幽助「すげーな・・・そこまで来るとある意味呪いじゃねーのか、それ?」

シンク「僕らからすればそう見えるだろうけど、本能的に求めてる物が来るなら呪いとは思わないだろ。むしろ探偵であるため、事件を解決したいって思うからこそ事件が度々舞い込んでくるのは呪いじゃなくて自分にとっては宿命・・・とでも都合よくと言うか、言葉面がいいように聞こえるよう解釈すると思うよ。あいつなら」

ルーク「・・・そしてその考え達の集大成がさっきのあいつとの話だってんなら、より苛立ってくんな・・・そんな自分が自分でありたいとか、都合のいいもんばっかり求めてそれが応えてくれる・・・そんな奴に説教垂れられたって事がな」

シンク「僕の勝手な予想じゃあるけど、あいつは自分の身近な奴らが罪を犯したか犠牲になって死んだか・・・なんて経験はほとんどないに等しいと思うよ。さっきの話の中で仲間を失ったとかそういった話は無かったし、喪失感を感じられるような言葉をあいつは口にしてなかった。多分ルークの苛立ちにはあいつが何か喪失したって気持ちがこもってなかったのを感じたからってのもあると思うよ」

幽助「喪失感、ねぇ・・・分からなくもねぇな。俺も幻海の婆さんや桑原が戸愚呂にやられた時の事を思い出すとどうしようもない気持ちが蘇っちまうしよ」

ヒム「そうだな・・・ハドラー様達が命を賭けて戦ってるのを感じて、そして散っていった時の事を思い出すと喪失感ってヤツはどうもな・・・」

ルーク「・・・二人の後だと俺らは居場所が無くなっただけって感じになるけど、あいつはその実は俺らより失った物が極端に少ないから言葉だけの言葉が苛立ったって事か・・・」

シンク「だろうね。そして今話した中身を全部あいつに話した所で、いくつかは納得はしても大半は納得は出来ないだろうさ。あいつが関わらなきゃ解決しなかった事件はいくつもあったろうし、それを認めちゃったらあいつの探偵としての自己は矛盾の上に成り立ってるって事で思い悩んで崩壊しかねないしね・・・まぁあいつは恵まれてるだろうからそんなことにはならないだろうし、僕達に関わらないならもうどうでもいいことさ。多分あいつはぐうの音も出ない程に僕達を論破出来る材料でも見つけられない限りはこのギルドに来ないだろうしね」

ルーク「そっか・・・んじゃいっか、もうあいつの事考えるのはな」

シンクの確信めいた言葉にルークも気持ちを切り替える。もう来ないも同然・・・そんな相手の事でずっと苛立つ事などないとばかりに。











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