崩壊の後の再生して混同した世界

(視点変更)












公爵「ふぅ・・・」

・・・誰もいない執務室の机に向かいながら、深いタメ息を吐く公爵。

公爵「どうしてこうなったのだ・・・確かにヴァンを無用心に信じたことは私も含めた皆が迂闊だったとは思っているし、導師のレプリカとルークのレプリカがあんなことをしたことも理由にはあるだろう・・・だがそれでも、ここまでの事になるとは思っていなかった・・・」

そんな風に公爵が憂鬱になっている理由は、オールドラントの現状にあった。






・・・現在キムラスカの立場は微妙なもの。そうなっている原因は多々あれど、一番の理由はマルクトとダアトの対立関係が解決する目処が全く立っていない事にある。

この事に関してはキムラスカ側からすれば誤算どころか全く想定していない結果であった。マルクトはキムラスカとは敵対はしても、ダアトはその立場もあって敵対などまずないだろうと見られていた為に。

だが事実が明らかになった上での会談でモースのあからさまな悪意を受けたピオニー陛下の一切の容赦のない対応は、否応なしにマルクトの本気を理解させられた。

・・・この事実にダアトよりどうにかしてほしいと執りなしを求められたキムラスカであったが、キムラスカ側としても大きく表立ってダアトを援護したとなれば人々の目があることもあるが、何よりアッシュの事を始めとしたダアトの行動に不信しか持てない人間が今のキムラスカには大多数いるのだ。故にキムラスカ側は口添え程度ならするが、大々的な協力は出来ないと答えるしかなかった・・・そしてその結果は無駄、の一言に尽きる。






公爵「・・・何故我々がダアトとマルクトの顔色を伺うような真似をしなければならんのか、というのは言ってはならぬとは理解はしている・・・ダアトに味方を出来ぬのもそうだが、したくないのもある。その上で我々が中立の立場を崩せば、今のオールドラント領のバランスは一気に崩れることになる・・・いっそダアトを見捨てれるならどれだけ楽な事か・・・」

更に公爵は嘆くような声を漏らす。ダアトを見捨てる事が出来ないという事に。






・・・今のキムラスカの立場は公爵が言ったよう、マルクトとダアトの間の中立といったような物となっている。ただそれも状況が勝手にそうなってしまったからこそである。マルクトとダアトの対立によって。

この状況に関してキムラスカは不本意な物でこそあるが、これ以上オールドラントが混乱に満ちるようなことは避けねばならぬといった考えで耐えているのだ。元々は預言により戦争を行おうとしていたがそれも今のこの世界で出来なくなったばかりか、下手に隙を見せれば他の世界の者達に突け込まれかねない危険性もあった為に。

・・・だがそれでも、個人的な感情として公爵からすればダアト・・・正確には未だ使えるからという理由で所属しているヴァン達の事は気に入らないとしか思えない。公爵からしたなら本物の『ルーク』であるアッシュを拐い、ルークをまんまと騙す形で屋敷に戻した為に。

今はもうバチカルには公然の出入り禁止状態になっているためにヴァンに会うような事はないが、昔のように信頼を向けるなど出来るはずなどない。むしろ未だヴァンを処罰せず所属させているダアトとの縁を断ち切りたいとすら考えているが、その理由の最もたる物は・・・






公爵「・・・ヴァンのせいでルークは酷く変わってしまった。いくら言っても私達の言うことをまともに受け入れてはくれん・・・今となってはあのレプリカをレプリカとヴァンが言わなかった方がまだマシに思える・・・」

・・・そう、本物の『ルーク』ことアッシュの事である。始めこそは本物の『ルーク』が戻ってきたと経緯はともかくとして喜んだが、今ではもうほぼ厄介者認識になってしまった。

ヴァンに対する恨み言とアッシュに対する諦めを公爵は口にする。もう何もかも投げ出したいといった、そんな気持ちが多大にこもった声で・・・









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