奈落はいつも足元に

紫色の霧、障気が目の前に広がっている。その光景をまっすぐ見つめてルークとC.C.はタルタロスの甲板でゆっくりしていた。




「あそこでギアスの力を使わなかったのは何故だ?ルーク」
「予想外なオリジナルの行動が入った。もしあのままギアスを使っていたら無抵抗なヴァンをオリジナルは殺すにせよ何にせよ、俺の使役意図とは違う事を行っていたはずだ。それにまさかあそこでパッセージリングが自然崩落するとは思っていなかったからな。寧ろ使わなくてよかったところだ」
「・・・そうか」
ルークの言葉にC.C.は安心する。ルークの考えは常人には計り知れない、それは彼女といえど例外ではない。しかしルークは自分にだけは策や思考の内を漏らしてくれる、そのルークの言葉を聞いたC.C.には自然に安堵が訪れていた。
「ん・・・見えて来たぞ。あれがユリアシティだ」
彼女の指差した先には障気の海の中に悠然と佇む創世歴時代から存在する唯一の街があった。





「さて・・・ここから始まるんだな、ルーク?」
「あぁ、予言を覆すための幕が開くときだ」
同行者達が先に降りていくなか、最後にタルタロスを降りながら二人は会話をする。
「もたもたしないで早く下りて。あなたたちを待ってるのよ」
そんな二人の会話に気付かず、ティアは二人の行動を促す。何をもってして兵士ごときが王族に偉そうな口をきけるのか、このユリアの子孫と初めて顔を合わせた当初二人はそう思っていた。時がたつにつれ、今は戯れ事以下の紡ぎ事しか出てこないだけの単細胞と、そう二人の脳裏に刻まれていった。
「・・・なぁ、ルーク。こいつはいらんだろう。殺していいか・・・」
「お前にとっては取るに足らない糞餓鬼じゃなかったのか?」
促した後はただそのまま先に行ったティアの後ろ姿を見て、C.C.が苛立ちが分かるように呟く。
「あんなのでも一応はヴァンに倒れられた時の代わりだ。殺すのは後にしろ」
「・・・あぁ、わかった」
かなり渋々という感じで返事を返す。だがやっぱりまだ気が落ち着かないといったかんじだが。



「見つけたぞ、屑が!」
そこに怒鳴り声が乱入してきた。その主は・・・
「・・・なんの用だ、鮮血のアッシュ」
ルークは若干めんどくさそうにそんなアッシュと向かい合う。まさかこんなに早くヴァンから離れてこちらに来るとはルークも思っていなかったようで、この激しさだけしか持ち合わせていないオリジナルに会うのはルークも避けたかったようだ。
「・・・ルーク、憂さ晴らしをしていいか?」
そこにC.C.がオリジナルの言葉を待つ前にルークに声をかける。ルークもその言葉の意味がわからないような人物ではない。それと同時に、ルークはある思い付きが頭の中に生まれていた。
「・・・いいだろう、ただそいつは絶対に逃がすな。この際あいつらにも絶望を与えてやるからな」
絶望を与える、その意味を瞬時に理解するC.C.。
「・・・おい、貴様ら!!一体何をごちゃごちゃ・・・ぐぉっ・・・!」
オリジナルが二人のやり取りに痺れを切らして声をあげると、その瞬間C.C.はオリジナルの前に踏み込み鳩尾に思い切り膝をいれる。オリジナルは反応しきれずにその攻撃をもらう。そこに更にC.C.は前屈みになってあらわになったオリジナルの首筋を肘鉄で追撃し、オリジナルを地に屈服させた。
「よし、これからこいつをどうするんだ?」
気絶しているのだろうオリジナルをその女としては若干細めな腕で抱え上げながら、ルークに質問する。
「縛り上げて街の代表者の所に連れていく。そしてこいつらの前で真実を明かしてやる・・・ティア、急いであいつらを代表者とともにひとところに集めろ。反論くらい後でいくらでも聞いてやる」
先程までのやり取りをポカンと見ていたティアはルークの言葉になぜあなたの為にと言おうとしたが、何かルークの言葉にえもいわれぬ恐怖を感じたティアは反論する前に本能で足をユリアシティへと向けて走っていった。





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