暗の知略に招かれる戦

・・・そして所は変わり、ザオ遺跡のセフィロトの中。パッセージリングの操作板の前には、多数のマルクト兵士とそのマルクト兵士に両手両足に手枷を付けられ口と胴体に縄を縛り付けられ引き立てられたヴァンを引き連れた官兵衛とルークとシンクがいた。
「・・・ふむ、これでこのセフィロトとやらのユリア式封呪は解除出来たか・・・さぁ謡将をタルタロスに送って差し上げろ。体調が悪そうだ。このままここにいさせたらころっと逝きかねんしな」
「~~~っ!」
パッセージリングのユリア式封呪が解除出来たのを確認すると、官兵衛はすぐさまマルクト兵士にヴァンを連れて戻るよう命じる。その言葉にヴァンはなんとかその場からもがいて脱しようとするが、マルクト兵士の取り押さえにより体を担がれていく形で場から遠ざけられていった。
「・・・よくやるよね、障気でボロボロの体で」
「それだけ不本意なんだろうな。自分の思った通りに動かない事態ってのが」
「お二人さん、喋るのは別に構わんがパッセージリングとやらを操作しながらにしてくれ。出来るだけ早めにザレッホ火山とやら以外のセフィロトに行っておきたいんだ」
「「わかってるよ」」
その光景を見て何の感慨も見せず淡々と話す二人に対し、官兵衛は自らの策の成功の条件を話し二人のユニゾンの了承の声を取る。






・・・官兵衛の思い描く最終結末。その中には人類を存続させるための外殻大地降下も入ってはいる。が、それにはどうしても避けて通れない存在が一つある。それはセフィロトが一つダアトにある事だ。

今現在キムラスカとマルクトの協力体制が確実な中、行けないセフィロトはザレッホ火山以外には実質ないと言っていい。そんな現状でヴァンを捕らえているのに、セフィロトに行かず手をこまねくなど有り得ないと今官兵衛達はセフィロトを回っている。

だが問題はもしかすればマルクトと戦争になるかもしれないダアトで、ヴァンを引き連れた官兵衛達が堂々とダアトを闊歩出来る訳がない。まずダアトに行けばどうにかヴァンを取り返さんと、モースは色々手段を講じてくるだろう。今はダアトとは表立って争うべきではない・・・そう考えたが故にまずはダアト以外の地にあるセフィロトを秘密裏に回ると官兵衛は決めたのだ。

・・・だがそうやってセフィロトを回り、ダアトだけを残せば当然外殻大地全てを魔界に下ろす事など出来ない。そのままであればダアトはパッセージリングの崩壊までセフィロトの操作が出来ない事になる。とは言ってもダアトと預言を守るべきだと考えるモース率いる神託の盾が、敵である官兵衛達の行動を許すはずはない。

しかし官兵衛はそんな状況を見越した上で、策を講じた。その策の核となるのは・・・






「ザレッホ以外のセフィロトを全て回り終えたら、マルクトとキムラスカが戦争を仕掛けるんだよね?」
「アクゼリュス救援の際に第七譜石が見つかって導師がそれを詠んだと、中身を付随させた嘘の情報を流してからな。当然民は導師の方を信じるだろうから、ダアトの士気はすぐに下がる。その上で最初の激突以降はジワジワと兵糧攻めをすれば尚ダアトの士気は下降する。そうなれば預言を信じる事をやめた民に戦争に疲れた民達はダアトから逃げ出し、残るのはモースを筆頭とした未だ預言を信じる者達くらい・・・そこで導師がモースと刺し違えた、となればそれでもうダアトは終わりだ・・・まぁあくまで刺し違えた、と見せるだけでいいがな。不安は相打ちになること、と言いたい所だが・・・」
「・・・イオンじゃ現実味がないよね、それ」
ルークが制御板を操作する中、官兵衛とシンクはこれからの流れの事を話し合いイオンの事になって同時に顔を引き攣らせる。



・・・その策の核とは、イオンだった。






8/10ページ
スキ