ワールドトラベラールーク君シリーズ TOW編

ゼロス「噂を流したのは誰か知らないけどさ。それでまぁ少なからずルーク君とベルが別世界のとは言え、同一人物って事でこれから何かしらあるんじゃないかって思ったからさ。例えば噂を聞いたアッシュからの八つ当たりを受けるんじゃないかってね」

ベル「八つ当たり・・・うわぁ、否定出来ないのがすげぇ微妙な気持ちになる・・・」

ゼロス「まぁ野郎ばっかっつってもこんな場だし、一応は俺様も気を使ってちゃんと身になる話をしようって思って色々言ったのよ?これから気をつけた方がいいし、船内であんまりアッシュに会わないようにってさ」

ベル「・・・そうする」

・・・ゼロスの話がすっげぇ身に染みる。まず間違いねぇ。噂が広まってアッシュにも行ったら確実に俺と衝突する。そしてルークとも・・・












・・・その後クエストを終えた俺達はゼロスとキールの二人と別れ、再びジューダスと二人で部屋に集まった。

ジューダス「・・・ゼロスにキールは白だな。特にキールはほぼ初めて聞いたといった顔をしていた」

ベル「うん・・・だけどあんな噂が流れてるなんて、俺初めて聞いたんだけど・・・」

ジューダス「それこそ密かに噂が流れたのだろう。ライマの関係者にベル・・・お前に気を使う形でな。だがそれもいつまで続くか分からんがな」

ベル「それってやっぱり、レイヴンの依頼人だよな・・・流したの・・・」

ジューダス「十中八九そうだろう。そして噂が広まるに至ったのは、アッシュ自身がその噂を否定出来ん行動を取ってきたのも一因にある」

ベル「えっ、一因って・・・?」

ジューダス「ヤツがナタリア以外に配慮した言葉遣いに行動をしなかったことだ」

ベル「えっ・・・っ!」

・・・ナタリア以外に配慮しなかった?・・・っ、それって・・・!

ジューダス「・・・お前も気付いてるだろう。アッシュが露骨な程にナタリアに対してのみ態度を軟化し、他の者には威圧的な態度を崩さんことを。そしてそれをナタリアは積極的に直そうとはしない。あくまでその場で相手に言葉で謝罪するのみだ・・・そう言うのも相まって、ルークに関する噂が徐々に浸透しているのだと僕は考える。そしてここで更に厄介なのはナタリアの行動だ」

ベル「・・・ナタリアの・・・」

ジューダス「ナタリアの行動はルークではなく明らかにアッシュ側に寄った行動だということは分かるはずだ。二人が揃えば確実にナタリアはアッシュに寄る・・・この行動はいかに気安い関係であるとは言え、婚約者であるルークを蔑ろにしているとも取られる行動だ。そしてそれがなおのこと噂を助長する。周りに少しずつ気を使うルークの方がアッシュよりいいのではないかとな」

ベル「・・・そんな・・・」

ジューダス「・・・だがここで一つ、問題が生じる。それがレイヴンの依頼人とルークとの間に意識のズレがあることだ」

ベル「えっ・・・ズレ・・・?」

ジューダス「ルークの望みはアッシュが王位を継いでナタリアにその王女になって欲しいのだろう。だが今このまま噂が先行すれば評判の良いルークが王になった上、ナタリアとアッシュが王座から離される可能性が高い・・・そもそもこのアドリビトムに来たのは内乱のあるライマから逃げる為もあるが王位を継承するのを見定める機会でもあるため、その噂の真偽次第ではルークに王位が一気に近付くことになるとレイヴンの依頼人が見てな」

ベル「なっ・・・!?」

・・・嘘だろ、レイヴンの依頼人にそんな狙いがあるなんて・・・!?

ジューダス「・・・誰が依頼人かは僕も分からない。だがそれでもルークはレイヴンに依頼人を切り捨てることは出来ん。それをしたら一気にルークの立場は悪くなる・・・よく考えたものだ」

ベル「それは、どうにかすることは・・・」

ジューダス「無理だ。ルークに勧告は出来るだろうがそれ止まりで、それ以上は何も出来ん。迂闊に動けばそれだけルークが不本意な状態に晒される、秘密をバラされるというな」

ベル「そんな・・・」

・・・マジかよ・・・本当に八方塞がりじゃないか、それだと・・・

ジューダス「・・・とは言えあくまで噂は噂の上に、ルークのあの姿は演技であると考えられん程に堂の入った物だ。そう簡単には大事にもならないだろう上にルークもそう簡単に尻尾を出すとは思えん。現状ですぐに何か起きるという事もないだろう、状況を打破するならその間だ」

ベル「状況を打破って・・・」

ジューダス「決まっている・・・レイヴンの依頼人が誰かを見定める事だ。早目に誰かが分かれば対策も取れる。そしてそうしなければ後々が厳しくなるのは明白だ。互いの意識に差がある以上な」

・・・確かに、ジューダスの言ってることは分かる・・・でもこの船の中から見つけられるのか、そんなヤツ・・・!?




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