ワールドトラベラールーク君シリーズ

「・・・ヤツはかつて俺がまだ双子座の聖闘士だった頃、唐突に聖域にいた俺の前に現れた。天馬星座の聖闘士は現れていないのか、とな。その後とりとめのない会話のように見せてさりげにデフテロスが見える位置にまで行き疑心を植え付けるような事を言った後、俺の額に触れた。それはまさに一滴の水が落ちて波紋を起こすよう、俺の中に染み渡っていった」
「まさか・・・それがお前が変わった理由だと言うのか、アスプロス!?メフィストフェレスとやらが施したその邪悪の一滴が、お前を・・・!?」
「成程、それで悪に染まったお前がデフテロスを幻朧魔皇拳で操り教皇の殺害をしようとしたわけか」
「・・・今になって思えば愚かな事だ。自らの意志で全て事を為していたと思っていたが、それは全てメフィストフェレスの掌中の上の事だったのだからな」
「「「「・・・」」」」
・・・それでアスプロスが過去を語ったんだけど、全てメフィストフェレスのせいと分かりデフテロスにシャカさんに似た人が当時起こした事の補足もして、自嘲気味に笑ったことで俺達は何とも言えない気持ちにさせた。
「・・・でもなんでそのメフィストフェレスは先代の事をそんなに気にしてたんだ?俺にはよくわかんないんだけど・・・」
「・・・お前は次代の天馬星座か。その答えを言うならお前の言う先代とやらが神殺しの力を持っていて、先代がヤツの息子だったからだ」
「!?先代がメフィストフェレスの、子供・・・!?」
「ヤツは自信を覗かせ語っていた。天界に行き天馬星座の力を使いクロノスを殺すと・・・だがヤツの子供になったとはいえヤツに従う道理もないのに、どう従わせるつもりだったのかは俺には分からんがな」
「・・・」
それで星矢が先代にこだわっていた理由についてアスプロスに聞いてみたけど・・・確かに敵の子供だったなんて聞いて驚くだろうし、どう従わせるかなんてわからないよな。星矢も聞くだけ聞いたけど微妙な顔してるし・・・
「・・・さて、話は終わりだ」
「む・・・何をするつもりだ、アスプロス?」
「元々俺は教皇の座を狙い地上を掌握するつもりだったのだ、そしてこうやってアテナの力により甦った以上やることは一つ・・・!」
「アスプロス、貴様・・・っ!?」
「・・・むっ・・・?」
そんな時にアスプロスがニヤリと笑む姿に老師が反応したけど、明らかに不穏な空気をまとわせ拳を握った事にデフテロスが立ち向かおうとして周りも戦闘体勢に入ろうとする・・・けど二人とも何か戸惑ったような声を上げた後、周りのシオンさんに老師を除く先代達も戸惑い自身の体を見る。
「どうした、デフテロス?」
「馬鹿な・・・小宇宙が、扱えん・・・!」
「・・・それはおそらく、私が貴殿方を甦らせた事による副作用かもしれません」
「アテナ・・・!」
たまらずシオンさんが何事かを聞くけどデフテロスから小宇宙が使えないと聞き、アテナさんが発言したことに一同一斉に注目を集める。
「私はハーデスと違い冥界を束ねる神ではありません。そんな私が貴殿方を自らの力で甦らせた結果、貴殿方から小宇宙を扱う為の力を失わせたのではと思います」
「つまり・・・シオンと童虎を除き、もう小宇宙を使えないというのですか?我々は・・・」
「・・・おそらく」
「くっ・・・!」
小宇宙を扱えないのは自身の不完全な力のせい、そう語るアテナさんにシュラさんに似た人が唖然とした様子を浮かべそれを肯定されたことでアスプロスの顔に悔しいといった感情が滲み出る。







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