ワールドトラベラールーク君シリーズ

・・・結局シャカさんは処女宮に帰っては来なかった。獅子宮の前後どんだけ被害にあったんだろう・・・そんなことを思いながら次の宮の天秤宮に行く用意をしていた俺達。



「おう元気か!ルークにカノン!」
「老師!わざわざ来ていただかずとも・・・」
・・・そうこうしてたら、次の宮から老師?って人が笑顔で来た。けどなんでこのどう控え目に見てもカノンより年下の人がカノンから老師って呼ばれて、敬意を持たれてんだろ?
「なぁカノン、どうして老師って呼んでるんだ?お前より若いだろ、この人」
「あぁ、それは・・・」
「それは少し説明するのは待ってくれんかの、カノン」
「は・・・しかし、何故?」
「いやなに、つい先程ムウより連絡があってな。シオンが聖域に帰ってきたらしいのじゃ」
「え・・・!?」
ん?確か教皇のはずだろ、この聖域の?なのになんでカノン微妙に嫌っぽい空気を出してんだ?
「どうせなら土産と共に思い出話に花を咲かせながら説明をしたくての。紫龍が今つまみなど用意して待ってくれておるから話はそこでするぞ!」
「・・・そうですか」
加えて老師の笑顔がやたら嬉しそうなもんだから対比で余計に際立つし。
「さぁそうと決まれば早く天秤宮に向かうぞ!」
「・・・はい、老師」
さっさと話を決め先を行く老師にカノンが諦めたようとぼとぼと俺を抱き上げ、歩き出す・・・一体何があんだ?















・・・そんなことがあり天秤宮に着いた俺達。そこには獅子宮で会った紫龍の姿があった。
「・・・老師、戻られましたか」
「うむ、紫龍よ。用意は進んでおるか?」
「・・・」
ん?なんだ、カノン。紫龍に向かってアゴで天秤宮の方に行けみたいなジェスチャー出してるけど。
「・・・はい。ですがまだ数品程準備が出来ていませんので、私はまた用意に戻ります」
「なら俺も手伝おう、教皇が戻られるまでには済ませておきたいからな。老師はここで教皇のお出迎えをされてください。我々は天秤宮の中にて準備をしておりますので」
「うむ、わかった」
それが届いたのか紫龍の言葉にすぐさまカノンが割って入り自分達もと言うと、老師は笑顔で頷く。
「さ、行くぞ。ルーク」
「うん・・・」
・・・有無を言わさない力を感じた。下手に逆らうと面倒な事になると思った俺はただ同意し、カノン達と天秤宮の中に入る・・・






「・・・なんでよりにもよってこのタイミングなのだ、あの方は・・・!」
「ムウも出来る限りのサポートの為に教皇と一緒に登ってくると言っている。だから耐えてくれカノン・・・!」
・・・そして調理途中の料理が横のテーブルに何個か置かれている中、俺を下ろしたカノンと紫龍が調理を開始しながらすぐに嘆くような会話を交わし出した。
「・・・何が起こるんだよ、カノン?」
「あぁ、ルーク・・・お前は知らなかったな、あの二人が揃う時の事を」
「老師と教皇・・・この二人は常日頃なら大変に立派な方で、この紫龍も常々尊敬しているのだ・・・だがしかし、もう俺は耐えきれん・・・!」
「・・・だからなんなんだよ、一体・・・?」
「・・・昔話が酷いんだ・・・」
「・・・は?」
その理由を聞いてみれば返ってきた答えは昔話・・・正直なんだそりゃ、としか思えないんだけど・・・
「・・・とりあえずかいつまんで説明するが、教皇と老師は前の聖戦からの生き残りでな。あの二人はその時代から二百年以上も生きてきたんだ」
「は!?二百年!?」
「とは言っても老師は神々に伝わる特殊な仮死法により肉体が歳を取らずに生きてきて、教皇は一度死にはしたもののハーデスにより全盛期の若さの肉体を持って甦ってな・・・見た目は若いが、中身は確かに二百年も生きてこられた方々なんだ」
「・・・ふぇぇ・・・」
「それで聖戦が終わり二人共に生き返った後時たま飲まれる事があり、初めはこの紫龍もありがたき訓示をいただけることを光栄に思いその場に同伴させていただいたのだが・・・何せ酒が入った二人は昔の思い出に浸り、その話ばかりをするのだ・・・」
「あ・・・そういう事か・・・」
・・・続いた話を聞いて納得した。教皇と老師、相当酒癖悪くて周りに相当迷惑かけてんだなと。つーかカノンともかく真面目を絵に描いたような男の紫龍がそんな絶望するって・・・どんだけだよ、二人。








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