ワールドトラベラールーク君シリーズ

「フッ、そのように敵意を剥き出しにするな一輝よ。私はただアンドロメダと手合わせをしていたに過ぎん」
「毎度毎度嘘も甚だしいことを抜かすな貴様・・・覚悟はいいだろうな?」
「生憎だが今はその気はない。君の相手はまた後でしてやろう」
「・・・は・・・?」
「ん・・・なんか一輝さん少し面食らってるけど、なんで?」
「普段のシャカなら一輝が来たらそれこそ殺しあいになるまであいつに絡む。普段と違う態度だから一輝も驚いたんだろう」
・・・ってことはいつもこの二人会う度に修羅場な空気醸し出してんのか・・・おっかねぇ。
「兄さん!」
「・・・瞬、この男はどうかしたのか?」
「ううん、いつもと変わりはないけど・・・何を考えてるのかわからないところも」
「失礼だな君は。なんなら続きをしてもいいのだが・・・いくかね、ポトリと?」
「・・・その気があろうとなかろうと、今この場で殺した方がいい気がしてきたな」
「・・・いい加減にしろシャカ。これ以上グダグダするようなら俺とルークはさっさと先に進むぞ」
えっ・・・そこで俺巻き込まれるの、この殺伐修羅場に?何間に入ってくれてんだよ、カノン。
「・・・なんだこのガキは?」
「あっ、兄さん。この子はルークでしばらく聖域に住むことになったんだ、よろしくしてあげてね」
「・・・初めまして、ルークです。よろしくお願いします」
「・・・」
そんな俺を見下ろす一輝さんに瞬が俺を紹介してくれて、俺は素直に頭を下げる。そんな俺に一輝さんが取った行動は・・・
‘グワシグワシ’
「・・・えっ?」
「・・・」
ただ無言で頭を撫でてくるという物。その目には何か遠い物を見る感じがあった。
「・・・あ、あの・・・」
「・・・あぁすまんな。お前の過去を見てついやってしまった」
「過去って・・・」
「兄さんは精神を砕く技を使えるんだけど、その精神を砕く時に心の内を覗けるんだ」
「得体の知れんガキと思いつい探ってしまったが、そうそう触れていい内容ではなかったからな・・・すまん、ルーク」
「い、いやそんなこと言わなくても・・・」
「敬語はいらん、普通にしろ」
「・・・うん。でも一輝は謝らなくてもいいよ。俺は沢山後悔もしてきたし馬鹿だって思うこともしてきたし誇れるような人生じゃないかもしれないけど、それも俺は今までを受け入れた上で生きてるから・・・謝られると余計に辛くなる、かな」
「・・・そうか。悪かったな、ルーク」
・・・心の内を覗ける、確かにそんな力があるなら俺の今までの人生は人から見たら酷い物なんだろう。けどそれで同情とかされるのは俺は嫌なんだ、それこそ今までの俺が惨めに思えてしまうから。
一輝も俺の気持ちを掬い取ってくれて、真剣に謝ってきてくれる。
「さて・・・一輝との顔合わせも済んだ、これでいいだろう」
「何・・・まさかシャカ、この為に一輝を呼んだというのか?」
「フッ・・・」
そこに意味深な言葉を告げるシャカさんに視線が集中し、カノンの問いかけに意味深に口元に笑みを浮かべる・・・なんだろう、この人がこんな気遣い出来るなんてなんか意外だった・・・
「さて一輝、用事も済んだことだ。改めて君の相手をしてやろう。かかってきたまえ」
「「「「・・・」」」」
・・・と思ったら、ドヤ顔みたいな空気で一輝を挑発してきた。やっぱこの人マイペースにも程がありすぎる・・・現にこんなこと言われて一輝も少しずつ殺る気出してるし。
「・・・シャカ。俺達は先に行っているぞ」
「うむ、ゆっくりしていきたまえ」
そんな空気にさっさとカノンは俺を担ぎ上げ一言残し、上の方へと歩き出す。背でどんどんと高まっていく小宇宙の大きさを感じながら・・・












・・・尚その後、凄まじい爆発音が獅子宮の方から轟いてきたとだけ言っておく。獅子宮に瞬達が無事ならいいな・・・そんなことを思いながら俺はカノンと共に主の帰ってこない処女宮で一夜を過ごした。








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