ワールドトラベラールーク君シリーズ

「・・・さ、何もない所だがゆっくりしてくれ。茶を今淹れてこよう」
「ありがとう、カノン」
・・・そして次の双児宮に来た俺達だが、俺を下ろしたカノンは宮の奥へと消えていく。
「フッ、カノンがあんな姿を見せるのはいつ以来だろうな」
「・・・いつもはあんなじゃないんですか、カノンは?」
そこにサガさんが微笑を浮かべ俺に近づいてきたけど、そんなカノンって今とイメージ違うのか?
「カノンは私生活では口下手な方でね、アテナや教皇に敬語を使えはするが口が悪い。特に兄である私には罵詈雑言に近い言葉遣いでね。優しく物を言うことが出来ないんだよ」
「あー・・・わかる気がします。何て言うか多分、いつもキチッとすることが出来ないんですね、カノンは?」
「・・・まぁそうだね」
・・・うん、サガさんの言葉で何となくわかった。つーか何となく思った、カノンって少しだけど・・・俺と同じところ持ってる。
「でもよくわかるな、ルーク君。カノンの事が」
「・・・多分、カノンって抑圧された環境にいたんじゃないんですか?それも、自分の意見が何を言っても通らないようなそんな環境に・・・」
「・・・っ!」
微妙に笑顔が崩れかけてるサガさんの問いに俺が共通してるって感じた事を言えば、今度こそサガさんの笑顔は崩れ目が大きく剥かれた。
「・・・どうしてそう、思ったんだ?」
「カノン・・・うん、いつか言わないといけないって思ってたから言うよ。俺の生まれを・・・」
そこにカノンが真剣な怖いくらいの表情を浮かべて入って来たため、ここで俺は自分の事を全て言おうと決心した。自分がファブレで軟禁をされ本物を預言の為に産み出されたレプリカであることを・・・












「・・・という訳です」
「「・・・」」
そして今度こそ自分の全てを話終えた俺に、同じ顔を並べた双子は共に厳めしい表情を浮かべていた。
「・・・俺は今初めて、自分のいた環境というものが最悪の物ではないと思えた」
「・・・その環境に押し込めた私が言うのも何だが、ルーク君の歩んできた道は間違いなく私達の歩んできた道に勝るとも劣らんだろう・・・よく無事に生きてきたな、ルーク君」
「はい、俺も今となってはそう思います。何も分からずただ周りが変わらない事に文句ばっかり言ってて、それを変える事が出来なかった・・・そんな俺がここまで生きてこれたのは、今でも信じられません・・・」
「・・・お前が俺の歩んできた道を推測出来たのはお前自身が似たような体験をしたからか・・・ならこれから話す話は辛いと知りつつ全てを話したお前への返礼だ、最後まで聞いてくれ・・・いいな、サガ?」
「・・・あぁ」
俺の言いたいことを全て汲み取った、その上で自分達の話を始めんとするカノン達に俺も真剣に耳を傾ける。












・・・カノン達の話は要約するとこうだった。黄金聖闘士になれる力と資格を二人ともに持ってはいたが、サガさんが兄として生まれたことから双子座の星座の聖衣を継ぐものはサガさんになりカノンはサガさんに何かあった時の予備扱いされていたこと。そしてその存在を誰にも知られてはいけないと聖域の中でサガさん以外にカノンの存在は誰も知らず、カノンは生きていたこと。そしてそんな自分の立場に嫌気がさし、カノンは・・・十三年前にサガさんにアテナの命を奪い聖域を掌握するようそそのかし、サガさんにスニオン岬にある岩牢に繋がれたとのことだった。



「・・・確かに抑圧された環境というものに嫌気がさしたことは否定出来ん。だがだからと言ってそれをどうにか打破することもしなかった俺は、どうしようもなく愚かだった。お前と違って自分でどうにか出来る力に知恵があったにも関わらずな」
「・・・」
・・・過去の自分の行いを懺悔するかのようなカノンに、俺は同情も否定も何も言えなかった。
「・・・いかんな、湿っぽくなってしまった上に茶も冷めてしまった。淹れ直してくる、少し待っていてくれ」
「・・・カノン」
「・・・ルーク君、ここにいる間だけでいい。出来るだけカノンと一緒にいてやってほしい」
「サガさん・・・」
話終わった所で誤魔化すよう場を離れていくカノンを見ていた俺に、サガさんが悲し気な瞳を浮かべ俺を見てくる。
「今でこそ私とカノンの仲も修復され友を持つようになったが、カノンにはその心を心から理解できる立場にいるものは誰もいなかった。だが君ならカノンの事をわかってあげれると思うし、カノンも君の事を嫌いはしないと思う・・・だから・・・」
「わかりました、サガさん。俺に何が出来るかわかりませんけど、それでいいなら」
「・・・ありがとうルーク君」
サガさんの言いたいことはよくわかった、だからこそ了承を返す。そんな俺にサガさんは立場もはばからず、頭を深く下げた。





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