ワールドトラベラールーク君シリーズ

・・・白羊宮で一夜を過ごした後、俺は次の宮の主であるアルデバランってやたらガタイのいい人に迎えられ小脇に抱えられ白羊宮を後にした。荷物みたいな感じは勘弁して欲しかったが、肩車されるとパーツ部分の刺々に当たるのは嫌だったので仕方なしにその扱いを甘んじて受けざるを得なかった。尚ムウさんは貴鬼とともに俺を見送ってくれた、カメラマン顔負けのカメラ捌きを見せた面影など見せず。

ちょっとこっそりムウさんのその姿に不安を感じた俺は姿が見えなくなった後アルデバランにムウさんはいつも写真を撮るのかと聞いてみると、それは彼の師でありこの聖域をまとめるシオンという人の趣味により始まったとのことだ。

・・・良く良く話を聞いていけばアテナ率いる聖闘士達は死後の世界である冥界を統率する神であるハーデスとその部下の冥闘士達との地上を巡っての聖戦を繰り広げ、その戦いを勝利して終えた後アテナが完全にハーデスを倒した事で戦争をしないという盟約を結ぶと同時に聖闘士に冥闘士に加え海を統率するポセイドンという神の部下でもある海闘士も含め失われた命を生き返らせる事を決めたらしい。そこで黄金聖闘士達全員に教皇であるシオンも生き返ったとのこと・・・だがそこからシオンの暴走は始まったらしい。

話によるとシオンは生き返ったのをいいことに多趣味に目覚めたらしく、今現在聖域をまとめる役割を持つにも関わらず旅をすることが好きになりカメラを手放さなくなったらしい。そしてそのカメラの被写体になるのが孫弟子とも言える貴鬼が多いらしく、自分がいない時の貴鬼の成長をムウに写真を撮るよう頼んで自分は世界を放浪しているらしい。それでムウ自身最初は嫌々やっていたものの、どんどんとカメラを撮ることの楽しさに気付き今では嬉々としてカメラマンに変わっていったとの事だ。

ただ教皇がそれでいいのかと言う俺にアテナが許可したことだとアルデバランが言ってくれたが、何か神々の争いやら生き返りやらなんやらでスケール違いすぎてもうどうでも良くなったよ・・・



・・・まぁそんな会話を交わしながらも次の宮である金牛宮に入って、俺は穏やかな時を過ごした。ムウさんの時も思ったが、なんでこんなに優しくしてくれるのかってアルデバランに言ったらグワシグワシと頭を撫でながら優しい笑顔で子供を信じなくてどうすると言ってくれた。なんだろうか、その見掛けに一瞬父親っぽいとか思ったが歳を聞いたら二十歳って聞いてなんか逆に凹んだ。こんな貫禄のある二十歳ってなんだろうと思うと同時に、若いのに父親って思ってごめんって・・・









・・・アルデバランは悪くないのに俺が若干悪気を覚えながら金牛宮での夜が明けると、次の宮から迎えが来た・・・ってあれ?
「サガさんが・・・二人?」
「あぁ、サガは双子なんだ。黄金聖衣を着ていないのがカノン、わかるな?」
「うん・・・」
アテナの手から俺を救い出してくれた(表現は間違ってないと思う)サガさんが服装こそ違うが、同じ顔を2つ並べていたことに驚く俺にアルデバランが双子だと言ってくれる。
「待たせたな。ではルーク君、行こうか」
「はい、お願いしますサガさん、カノンさん。じゃあありがとう、アルデバラン」
「おう、気をつけて行くんだぞ!」
俺達の前に来てかがんで視線を合わせて来たサガさんに答えつつもアルデバランに礼を言えば、いい笑顔で俺をアルデバランは送り出してくれる・・・ごめん、やっぱあんたのこと二十歳には俺は思えない・・・ってあれっ、カノンさんが俺を肩車してきたけど・・・俺なんで自分で歩かされないんだろう、勝手にスタスタ物事進めてっけど。
「・・・アルデバランと仲良くなったようだが、何故俺達には敬語を使う?」
「あ、それはアルデバランが子供らしくないからやめろって言われたんです。ムウさんに敬語だったから最初はそうしようと思ってたんですけど・・・」
「成程、アルデバランがそれを止めたか」
そんなカノンさんが俺に会話を振ってくるが、敬語をやめろって何度も言われてしまったからどうしようもないんだけど・・・カノンさん、なんか納得してるっぽいな。
「なら俺にも敬語はやめろ、カノンでいい」
「え・・・いい、んですか?」
「いいもなにも俺はあまり堅苦しいのは好きじゃない。好きに話してくれ、その方が俺は気が楽だ」
「・・・うん、わかったよカノン」
「「・・・フッ」」
そう思っていたら敬語をやめるように言ってきたカノンに、否定するのもなんなので了承を返せば同じ声がユニゾンして同じことを言ったように聞こえた・・・その瞬間この双子が顔を合わせた瞬間を俺は目撃し、同時に首をすぐさま元に戻した・・・うん、この二人照れてるな。









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