ワールドトラベラールーク君シリーズ

「・・・まさか怪盗って存在がまた別世界にもいるなんてな・・・」
・・・夜の暗い空が広がり通天閣を目視できる辺りで一番高いビルの屋上、1人俺はあそこにキッドを待ち受けるコナン達が勝つことをひっそり祈りながら双眼鏡を覗き込む。



・・・きっかけは昨日、トイレから戻った俺がコナンと服部の二人がやけに楽しげにぎらついた笑みを浮かべていた事からだった。一体何があったのかと聞けば、明日通天閣内に配置されるなんかでっかい宝石が怪盗キッドが狙うと本人から予告状が来たとの事だった。

それで二人は小五郎のオッサン達やキッドを担当する刑事として執拗に追いかけ続ける中森警部らと共に通天閣内でキッドを警戒してるわけだけど(なんとなくとっつぁんが思い浮かんだのは俺の秘密だ)、キッドがマスコミによく取り上げられている事があってその場にテレビカメラがよく入るらしい・・・ホントだったら俺も行きたい所だったけど、下手に顔が映ったら身分証もない俺の身が危なくなるかもしれないからな。だから遠巻きに見てんだ。



「・・・ん?」
‘ファサッ’
「えっ・・・!?」
・・・だがふと後ろの方から何かの気配を感じ振り向いたら、眼前に天空から純白の衣服を纏った男が舞い降りてきていた。コイツが・・・
「怪盗、キッド・・・!?」
「ご名答」
その名を驚きながら呟く俺に怪盗キッドはパチパチと手を叩き、モノクル越しの顔には余裕の笑みが浮かんでいる。
「なんでここに・・・!?」
「奇術師が種明かしをするのは些か格好がつきませんが、まぁいいでしょう。私はここからあの通天閣にまで飛ぼうとしているのですよ。とは言えここに人がいるとは思いませんでしたがね・・・」
「・・・」
意外な人間の登場に動揺していた俺だったが、向こうも肩を軽く上げおどけた様子を浮かべ意外だと言う・・・まぁ俺がここにいるのってあくまで遠くででも様子を見たいっていう俺自身の意思だからな、誰にも言わずにここに潜り込んだからそりゃ意外だろ向こうもな。
「・・・まぁ話はここまでにしておきましょう。そろそろ予告の時間が近付いている、私は行かせていただきますよ。あの大阪に佇む摩天楼までね・・・!」
‘ブワッ!’
「っ!行かせるか!」
「何を!?」
そうこうしている内にキッドがいきなりハングライダーを広げ飛び立とうとしだしたので、俺はキッドに向かって飛び上がる。
「崩襲脚!」
「くっ!?」
‘バリッ!’
「やばっ・・・!」
銃刀法に違反するかもとローレライの鍵は出せない現状で剣を使わず飛び道具も使えない為に選んだ技の崩襲脚でキッドに蹴りかかれば、なんとかキッド自体は避けたがハングライダーの翼を蹴破れた。その時キッドの見た目からの年相応の声が聞こえたが、すぐさまキッドは俺から離れる。
「マジかよ・・・あんな早い動き中々ねぇぞ!?これほどなんて・・・」
「一応手加減はしておいた・・・降参しろ、次は確実に当てる」
「おいおいちょっと待て!わかったわかった、抵抗はしねぇよ!」
動揺でキザな口調がもう戻らないキッドに少し圧力をかけると、キッドは手を前で振りながら後退しつつ降参宣言をする。よかった、剣じゃねぇとそんな手加減聞かねぇしな・・・
「・・・代わりに、奥の手を使わせてもらう!」
‘ゴォッ!’
「ハァッ!?」
と思ったらなんだ!?足の踵の部分から炎が出てすげぇスピードで俺の隣駆け抜けてったけど!?
「アバヨ!あんま使いたくなかったんだけど、これならハングライダーが多少傷ついてもバランスさえ取れりゃイケるぜ」
「・・・くっ!」
そしてそのまま破れたハングライダーを羽ばたかせふらつきながらも通天閣に向かいしっかり飛んでいくキッドの捨て台詞に、急いで距離的にムリにでも追い掛けようと走り出す・・・






・・・あの時俺は取り逃したキッドをなんとしても捕らえようとムキになっていた、目立たないようにという考えを心から忘れさせてしまいながら・・・










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