始まる恋と分かる物を始まらせたいと願うか?

「アッシュからすれば何故そこまでされなければならんと言うだろうし、俺がそんなに信用ならないのかという気持ちになることだろう・・・だがアッシュからすれば極めて不本意な形だとしても結果だけを言うなら、本当に好きな女と婚約することが出来た上で何もなければ将来的に自動的に玉座が転がり込むという、棚からぼた餅という以外に無いものだ。そして俺達がそうすることにしたのは今のままでは拭いきれない不貞を犯しかねないと思わせる程の不安を払拭するためのやむを得ない措置・・・だというのにアッシュにそうなったのはなるべくしてなったからというような態度になられたら、俺も勿論そうだが貴族達からしても反感が起こるのは目に見えて明らかだ。あんなことをさせたのにのうのうと何を、といった形でな」
「だからこそ事実を突き付ける形で戒めとさせるということですか。調子に乗るな、いつでもこちらはナタリアに言えるんだぞ・・・と」
「あぁ。それにアッシュの性格的に何も罰を与えなければ、しおらしく殊勝な態度で反省をして以降は大人しくなるなんて事にはならないのは目に見えている。だからその事を用いる形でアッシュに我慢をさせる・・・役割だからで婚約して結婚することは確かに王族や貴族では珍しいことではないが、だからと言って最初から仮面夫婦になることを相手に強要するような行動など取っていい筈がないのに、ナタリアへの想いからそんな馬鹿な事をしたからクロエから見放されたんだとな」
「・・・確かにいくらなんでもアッシュの態度は良くないと言わざるを得ませんね。実際に仮面夫婦になるような方々は珍しくはありませんし嫌々ながらにほぼ見知らぬ相手と結婚する方もいらっしゃるでしょうが、それで露骨に相手を突き放して当の本人は許されない恋にかまける姿を見せたとなれば、アッシュが見放されても当然と言える結果でしょう」
「あぁ。だからその辺りをちゃんと認識してもらった上でナタリアと結婚して大人しくしてもらう・・・もうアッシュもナタリアも簡単に信用する事が出来ない以上、俺の目が黒い内はあいつらを自由にさせるつもりはない」
「・・・そこまで断言されるのですか・・・貴方らしくないと思うと共に、それだけ貴方からしてもこの件は相当の事だという訳ですか・・・」
そうしてピオニーとジェイドはアッシュについてをまとめるように話していくのだが、らしくもなく容赦しないときっぱり言い切るその様子にジェイドはそっと漏らす。アッシュとナタリアの二人に対して公人としても私人としても見逃せない事をしたのだと見て・・・




















・・・それからしばらくして、ルークとナタリアの婚約の破棄及びアッシュとナタリアの婚約とアッシュがトラブルが無ければ次期王位に着くことは確定だというよう、ライマの内外に発表されることになった。だがその裏でルークの事がどうなったのかについてはほとんど明らかにされることはなかった。王位継承権が下がったという事が発表されたくらいで、以降はどうするのかについて触れられる事なくだ。

ただそういったように発表された傍らでアッシュ達に周りの面々は明るい顔を見せることはなかった。アッシュ達からすれば色々と不本意な事が折り重なった上でそんな形になることなんて望んでいなかったことであったことに加え、もうルークという存在と出会うことが叶わないとなったからだ。アッシュ達の思惑はそれぞれ違うが、それらをぶつけることが出来なくなった事で。

そんな風にアッシュ達が苦い思いをする中でルークはアドリビトムに戻ることになり、再び集まった面々の多数からアッシュ達で婚約を結び直したこととアドリビトムに来れない事を残念がられたが、一部の者達からは大変だったと慰められることになった。額面通りにアッシュ達が婚約し直してはいそれでおしまいだなんて背景じゃないことは察せられた為に。

ただもう色々と吹っ切れたルークはそれらを受け止めた上で当たり障りなく済ませ、再びアドリビトムで活動を始めた。実はアッシュと密かに婚約していたのはクロエであって、そのクロエから端を発した結果なのだというのは決して誰にも言わずに共に動く形で・・・









END









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