始まる恋と分かる物を始まらせたいと願うか?

「・・・この事に関しては公然の秘密か、あるいは暗黙の了解とアドリビトム内では見られていたというようにジェイドから報告の手紙をもらっていた。その上でアッシュとナタリア以外に聞くが、アドリビトムに来てからでもそれ以前でも二人がそんな想いあうような様子なんか一回も見ていないし、聞いたこともないという奴はいるか?いるなら正直に手を挙げろ」
「「「「・・・」」」」
「「っ・・・!」」
その様子にピオニーはそんなこと全く知らないなら手を挙げるようにと投げ掛けるのだが、二人以外が何とも言いがたげに視線を背けながらも手を挙げないといった様子に、二人は愕然といったような顔を浮かべた。何だかんだで二人からしたら周りの目を気にしてバレてないと思ってた行動だったのに、それがバレバレだったことを知り。
「・・・まぁ俺もアドリビトムに行く前から二人の事に関しては聞いていたし、アドリビトムでそういったことをしていたことに関しても別に不思議とは思っちゃいなかったが・・・少しジェイドとの報告から色々と二人の事についてを考えることになってな。それで貴族達とも話し合いを何回も繰り返した結果としてアドリビトムのメンバーからの言質が取れたなら、もうそうすることにすると決めたんだよ」
「少々お待ちを、陛下・・・私の役割としてここでどちらが王位を受け継ぐのかを判断する為であったのですが、貴族達が納得するというのも含めてどのような考えが浮かんだのでしょうか?」
「その件に関してはお前に任せたことを無駄にするような判断を下したことに関しては謝らせてもらう・・・だがライマ内でならまだしもアドリビトムという他国の者達でごった返すような環境の中、それもウッドロウにエステリーゼといった他国のやんごとない立場にいる面々の中でも二人がそういった行動をしていたことは俺もそうだが、流石に貴族達も看過出来る問題じゃないと見たんだよ・・・アドリビトムの面々が良心的だったり自身に関り合いがなければスルーするといったように言い触らすことはなかったから良かったが、これがもし悪意ある輩が知るであるとかウッドロウ達がどうかというようにライマに何かを言ってきたとしたら、俺達としても決して無視出来ない大騒ぎになっていた事だとな」
「「「「っ!?」」」」
その上で話を続けるピオニーに途中でヴァンがたまらず自身の役目もあったのにと口を挟むのだが、その事を謝りつつももしもの可能性・・・二人の密会を口にしてきたらとの仮定についてに、一部を除いて一斉に表情を青ざめさせた。特に当事者であったアッシュとナタリアはその様子が顕著に現れ、体を震わせる形でだ。






・・・王侯貴族のスキャンダルというものは揉み消すことが出来ずに明らかになった場合、その火消しをすることは相当な困難が伴うことになる。一応は民の模範として国の上に立つ存在がそのような王侯貴族・・・いや、人としてやってはいけないことに手を出していたとなれば、そんな人物を上に立たせているのかという叱責や疑問の目や声は確実に出て、根深く人々の中で残るからだ。

そしてそれが他国の人間にバレたなら尚更であり、普通ならそれを言うことは出来る限りは聞くから言わないで黙っていて欲しいと懇願するものなのだ。そんなことを他国の人間からバラされたなら頭が上がらないどころの話ではなくなるのだから。

だがそれをなされなかったのはピオニーが言ったよう基本的にアドリビトムのメンバーが良心的だったり自身に関わらないならと放っておくような面々ばかりだったり、そもそも大人というにはまだ年若い青年だったり国の運営に関わらないだとかそんな大事ではなく、単なる許されない恋程度なくらいというように重い物と見てない者もいたからであった。この辺りは本当に運が良かったと呼べることだろう。

だがそれはあくまで運が良かっただけであって、その事自体を許していいわけじゃないし肝を冷やすような事だったとピオニーは指摘したのである。最悪の事態は二人の事から十分に有り得たことだと。









.
18/29ページ
スキ