暗の知略で望む乱

更に言うならこうやってティアを投獄するにはまた訳がある。だがそれはまた、後の話・・・



「さて・・・続いてガイ、だったな。お前さんについては少し訳ありでな、すんなりキムラスカに帰す訳にはいかんからこうやって獄中に入ってもらった」
「な、なんだその訳って・・・」
ティアを片付け今度はルークを探しに来てフリングスの乗るタルタロスに即座に捕縛されたガイに官兵衛はターゲットにする。



「単刀直入に言おう。お前さん、ガルディオス復興する気はあるか?」



「!?」
まずは先制攻撃とばかりにガルディオスの事を堂々と口にし、ガイの驚く姿をいただく。
「な、何故そのことを・・・」
「お前さんのことはとっくに調べがついてるぞ。本名は、ガイラルディア・ガラン・ガルディオスだったな?ついでに言うならそこの小娘の本当の名はメシュティアリカ・アウラ・フェンデ、更に言うなら小娘の兄のヴァンの本名はヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ・・・だろう」
「「!!」」
だが更なる衝撃である本名を次々に明かす官兵衛に、へたりこんでいたティアまでどういうことだと官兵衛を凝視する。
「言いたい事は分かるぞ?何故俺の名前を知っているのか、だろう・・・それはあちらのルーク様がヴァンってのとお前さんが本名を呼んでる会話を聞いてしまったからだよ」
「!そう、なのか・・・ルーク・・・」
「・・・」
知っている訳を話す官兵衛にガイは呆然とルークに視線を向け、苦々しそうにルークは頷く・・・が、頷いた下にあるのは冷めた表情そのもの。



・・・官兵衛にルークは嘘をついた、名前を呼んでる会話を聞いたという事を。何故そうしたかと言えば、ガイをガルディオスと立証出来る物証がないためである。

以前は場の空気と流れに乗った時期のいいガイの告白がなければ、到底ガイはガルディオスに戻れるはずはなかった。キムラスカの王族のように赤髪碧目というわかりやすい特徴があるならともかく、ガイの見た目の特徴はそこらの一般人から探せばいくらでも出て来やすい有り触れた物だ。極端な話でガイに似た容姿を持つ者がその気になればいくらでもガルディオスの名を語る事など出来る。

なら次に生き残りだと判断するための材料は何かと言えば形見などの物証を見せることだが、ガイはそのようなものは持っていない・・・すなわち、実質的にはガイをガルディオスだと断定出来る材料などどこにもないのと同様なのだ。そう考えればピオニーの裁量もあり、以前は相当にガイは運がいい流れでガルディオスの名を戻す事が出来たと言えよう。

・・・そしてそんな確固とした証拠を持たないガイをガルディオスだと今この場で認めさせるには、巧妙な嘘を吐いて本音を引き出す事が楽。そう思ったからこそ、官兵衛とルークは誘ったのだ。ガイが自らそうだと認めるように。



「その話を大佐が聞いてな、マルクトは急いでこの数日でお前さんの本名とその近辺の事を調べあげたんだ。そうして実際に確認したらお前さんがガルディオスだと判明した、というわけだ」
「・・・っ!」
官兵衛の暴露にガイは不安そうに、だが期待するような表情でルークを見る。その様子からガイはルークに弁解の機を望んでいるのだろう。
「でだ、マルクトはそんなガルディオスの生き残りという存在をどうするか、という話し合いを行った」
だが官兵衛はガイの望みなど叶えず、話を続ける。
「まぁその話し合いの結果でお前さんには選択肢を与えることは決定した。だが」



「もうお前さんをファブレの家に戻す気はマルクトにはない。同様にこちらのルーク様にこれ以上合わせる気もだ」









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