始まる恋と分かる物を始まらせたいと願うか?

「・・・さて、この辺りでいいでしょう」
「私もここでいいと思うが、よく付き合ってくれるな。カーティス」
「今回の件に関しまして、ルークだけで全てどうにかするというのは酷だろうということから私宛にも手紙が送られてきたんですよ。今回のこの件に関してを説明された上で全面的に貴殿方のサポートをしろとね。ですから気にする必要はありませんよ」
「・・・私の気持ちを聞くだけなのに、サポート?」
・・・そうして来たのはルバーブ連山なのだが、そこにルークとだけではなくジェイドも同行してきた。
その事にクロエがいいのかと聞くがピオニーからサポートをしろと言われたとの事に、どういう事かと眉を寄せるがジェイドは疲れたように眼鏡を抑える。
「・・・貴女もアッシュとアドリビトムで過ごしたからある程度分かるでしょう。アッシュのプライドは低くないどころかむしろ高いと言える物だと言うことは。そんなアッシュですがアドリビトムでの態度から婚約を破棄したいと言われたとなったら、彼が大人しくというか怒らずにそれらを受け止めると思いますか?」
「っ・・・確かにそう言われると、私からそんなことをされたらアッシュは怒ることは間違いなさそうだな・・・自分がそんなことをされるなんてふざけるなと・・・」
「えぇ。実際陛下もその事を危惧されている上で、貴女が今どのようにアッシュとの事を考えているかは聞きませんが、まだ我々はしばらくはアドリビトムを離れる事は出来ませんし、貴女も今の世界の情勢もあって離れようとは思わないでしょう。だからこそ陛下は私にサポートをしろという手紙を送られたのです・・・どういう結論が貴女の中で出たのかはともかくとしても最低限アドリビトムを出るまではそれを黙っていて欲しいが、そうしてもらうのにこちらが何もしないのは良くないから私の目の届く範囲で構わないから貴女をサポートしろとね」
「・・・成程、陛下の様々な気遣いということか・・・」
そんなジェイドから出てきた説明を受け、クロエも納得した。ピオニーがいかに自分達やその周囲を考え、穏便に納めようとしているのかについてやその中身の妥当性についてに。
「その中身に関しちゃ俺も聞いてそういうことかって思って納得はしたけど、まずお前の気持ちに考えがどうなのかってのを聞けるなら聞きてーんだ。アドリビトムのメンバーになってからあいつやその周りの事も見てきただろうし、陛下にどうなのかってことを報告するためにもよ」
「・・・そこか・・・」
ただ次にルークから今どういう考えや気持ちになっているのかと問い掛けてきたことに、クロエは複雑そうに表情を歪めた。
「・・・私も一応は没落したとは言え貴族の端くれだし、今となっては私の両親のように仲睦まじくいられる人達ばかりで貴族や王族達が結婚をしている訳じゃない事くらいは分かっている。現に私もそうしてアッシュの婚約者にと没落したことからこの身を差し出されたのだからな・・・」
「「・・・」」
そこから普段のクロエなら言わないだろう辛い現実は分かっているといった自身の体験も交えて語るその様子に、二人は黙ってそれらを聞き入れる。






・・・クロエがアッシュの婚約者となったのは両親が賊に殺された事により、クロエの家であるヴァレンス家が没落した事で一人残ったクロエの使い道に関してを国の上層部が考えた結果として、他国のライマの王族であると共にまだ婚約者がいない立ち位置にいるアッシュにあてがうことで、国と国の繋がりを作るための狙いがあっての事であった。

ただそこにクロエがこうしたいという意図があったわけではなく、むしろ両親を失い傷心中のクロエの気持ちなど考えず勝手に話を進められた上でライマに送られたのだ・・・だからクロエも理解したくないことではあったが、今となっては理解しているのである。綺麗事だけで貴族や王族の結婚は成り立たないことが多いことに、自分は国の上層部からヴァレンス家として再起することを求められなかったのだということを。









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