暗の知略で望む乱

「お前さんらがここに入れられた訳・・・まぁ分かるわけないよな。お前さんらはマルクト軍に捕まる言われがない、なんて思ってるだろうからな」
「前置きはいいわ、早く教えて・・・!」
「まぁ実際、マルクト側がお前さんらを捕まえる理由はないんだ。捕まえた理由はキムラスカでお前さんらが起こした行動にある」
「キムラスカだと?」
「そうだ。そこの嬢ちゃん。お前さん確かファブレの家を襲ったんだってな」
「あれは、貴方には関係ないことよ!というより、なんで貴方そんなこと知ってるの!?」
「「・・・!」」
言い切った、分かりきった事だったがファブレ邸襲撃をそんなことと言い切った。官兵衛とルークは場も忘れ呆れそうになったが今更だと思い、話に戻る。
「・・・お前さん、普通家の中で未遂じゃあるが殺人沙汰を起こした人物を信用できるか?」
「・・・ルーク!貴方が話したのね!」
「っ!・・・話を、反らすなぁっ!」
「「!」」
だが早速話を始めたのにまたルークを批難して声を荒げるティアに、官兵衛はティアなどとは質の違う、ビリビリと圧をかけた怒声を出して二人を一気に萎縮させる。
「いいか!?小生の言いたい事を言い終えたならよそ見をしても構わん・・・だが小生と向き合わずただぎゃあぎゃあ騒ぐだけならこの鉄球でぶん殴るぞ!」
‘ジャラッ’
「・・・!」
いかに官兵衛が目の前の存在が取るに足らないと認識しているとは言え、姦しいだけの様子を延々と続けられては苛立つのは当然。
圧倒的な実力の違いを殺気に乗せた官兵衛の声に、鉄球を向けられたのもあってティアは気まずそうに押し黙る。
「さて、続きだが・・・そんな事実を聞いた大佐と導師はお前さんを捕らえる事を決めたんだよ」
「!?大佐と、導師が・・・!?」
「そうだ。疑うならこれを見てみろ、導師と大佐の捺印がされたお前さんに向けての手紙だ」
官兵衛は取り出しにくそうしながらも懐から証拠の手紙を取り出し、呆然とするティアに手渡す。
「・・・嘘、嘘よ・・・イオン様がこんな・・・」
「嘘でこんなものを渡すか。しかも導師は言っていたぞ。ヴァンを襲った事を身内の問題で済ませるというなら、ローレライ教団という同じ組織に属する者としてキムラスカに迷惑をかけたことを身内で裁かなければならない。それに和平に向かうにあたり、大問題を起こした人物を捕らえもせず普通に連れ歩いたなら導師の意志とマルクトの意志を疑われかねない。だから後でキムラスカにその身柄を渡すことも考慮した上で大佐に捕縛を願い出た、とな」
「イオ、ン、様・・・」
「信じられないなら信じられないでそれでいいさ。だがな、自分が潔白だって思うんならなんでお前さんは導師と大佐にバチカルで自分のやったことを言わなかった?お前さん、なんで導師達ならわかってくれるって言おうともしなかった?・・・ああ、そうか。こういう時のお前さんの言い分はこうだったな。貴方には関係ない、と。だがそうやって導師にまで関係ないって口をつぐんで当の導師に真実を知られた結果がコレ、だ。小生はこの結果に絡んではいない。コレはあくまでも導師と大佐の意志によるもんだ」
「っ・・・・・・」
官兵衛の本来の知嚢が存分に発揮された導師も引き合いに出す言い訳も許されない弁に、ティアはなす術もなく絶望したよううなだれ牢屋の床にへたりこむ。



・・・本当に潔白だと信じていたならイオンに寸分違いなく報告してもいいはずだが、それをしなかったのはティアからしてみればヴァンを襲ったことを身内の問題で片付けたかったことに尽きる。ティアはこの出来事を本人の認識からすれば、他人から見れば兄弟喧嘩の一環程度の認識になると見ていた。

だが引き起こした事態はそんなスケールで納まらないし、個人内で納める事など到底出来るはずがない。以前のイオンだったなら訳を聞いて弁護するなど親身にティアの味方になっただろうが、あいにく以前の経験があり大分心変わりしたイオンにティアを味方する気など自らが預言を詠む事と同等な程する気がない。

だからこそイオンはこの正当なティアへの仕打ちであり、官兵衛の策略の一環である投獄をアッサリと決めたのだ。官兵衛の知嚢でティアを論破してほしいと官兵衛に後を託す、オマケつきで。










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