始まる恋と分かる物を始まらせたいと願うか?

「・・・まさか、こんなことになるなんて・・・」
「あー・・・俺もあそこでお前と会うなんて思ってなかったから何とも言いようがな・・・」
・・・そうして久方ぶりの再会をしたわけだが、クロエはその驚きを何とか誰にも見せること無く押し隠す事は出来た。だがそれでどうにかその時は収まったが、時間が経っても気持ちに整理がつかなかったクロエは婚約者の兄であるルークと密かに接触する形で二人でクエストに出ようと、コンフェイト大森林にまで来た。
そこである程度奥に来て周りに人がいないことを確認して、思いっきり肩を落としてしまうクロエの様子にルークも気まずげな様子で頭をかく以外になかった。ルークもルークで態度に現すことはなかったが、実際はかなり衝撃を受けていた事とクロエの気持ちも分かった上で誘いを受けた為に。
「・・・まぁ俺が言うのもなんだけど、今回の事は仕方ねー事だって思えよ。俺らだってライマから好きで出てきたって訳じゃねーし、お前も俺らがいるなんて考えてアドリビトムに来たわけじゃねーんだろうからよ」
「・・・それは分かってはいるんだが、当のアッシュはどうしている?」
「・・・そこに関しては珍しくあいつから俺に話し掛けてきたけど、あれが何も言い出さないことはいいが俺の方が何かやらかしかねないからヘマをするなよ屑が・・・って釘刺しの言葉をもらったよ」
「っ・・・それだけアッシュにとって私との婚約は公にしたくないことだというのか・・・」
そんなルークが仕方無い事だと思えと言うのだがクロエが婚約者であるアッシュについてを聞くと、諦めたように口止めをしてきたというように返したその中身に苦渋を浮かばせた。公表はまだしてはいないとは言え、それでも絶対にその婚約を明かされたくないという気持ちを盛大に感じさせる様子に。
「・・・その辺りであいつがそんな態度になんのはナタリアの存在があるからだよ。あいつにナタリアからしたら隠してるつもりなんだろうが、互いに好きあってるっていう状態なのにそこで実は婚約してるなんてバラされるなんてのを避けたいってな」
「・・・は?話ではナタリアと婚約しているのはルークではないのか?なのに何で・・・」
「・・・これに関しちゃ昔からあいつらは好きあってたのに俺の方が兄だってことから、立場的に次期ライマ国王になる可能性があるし前陛下の叔父上が俺の方にナタリアをあてがうってなったんだけれど・・・そんなんだからあの二人からしたら想いあってるけど結ばれないみたいな状況になってんだよ。本当は結ばれない相手だけど、そんな状況だからこそ燃えるっつーか酔えるみたいな感じでな」
「・・・なんだそれは・・・」
だがルークから返ってきたそうする理由に関してを聞いていって、たまらずにクロエは脱力してしまった。アッシュはナタリアと許されない恋に興じているといった様子だということに。
「その辺りはこれからアドリビトムで暮らしていけばそんな様子を見ることも増えていくと思うから、嘘だって思うんならあいつらを観察してみろよ。あいつらがそうじゃないって風に見る方が難しいってなるだろうからよ」
「・・・ちょっと待ってくれ。まさかそれは私とアッシュが婚約するとなった時からそんな様子だったというのか?」
「・・・今更言うなって言いたくなるだろうけど、その通りだよ。だから俺もそうだしピオニー陛下もその事を踏まえて無理すんなってお前に言ったんだろうよ・・・アッシュとナタリアは一応は俺とナタリアの婚約及び将来的な結婚に関しちゃ決まったもんだからで、上の意向に歯向かうような事は言ったことはねぇ。けどそれで不満を抱いてねぇかって言ったらそんなことはねぇどころか、割り切る事なんか一切出来てないのは陛下の耳にも届くくらいだから、上から言われたことだからで結婚自体はしても絶対ろくなことにならないからってな」
「・・・話の通りだと言うなら例え結婚した所でアッシュが私を愛さないばかりか、ナタリアとの関係も含めたゴタゴタに巻き込まれる可能性が高いからということか・・・」
ルークは嘘じゃないからとこれからのアドリビトムの生活に注目してみるように言うが、そこでクロエがハッとしたように口にした言葉に申し訳なさそうに返した肯定の言葉達に、苦い様子になる以外になかった。結婚した後の様子を考えるとどうしても明るい様子など見えないのはクロエにも分かった為に。









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