英雄となった男の侵食

・・・そうしてオールドラントは預言からの脱却を目指して動いていく事になるのだが、その傍らでキムラスカは静かでいて陰ながら動いていった。主にアッシュとナタリアの事に関してを進めていくようにだ。

と言っても二人に話した中身についてをインゴベルト公認の形で進めるようになったことで、二人は言うことを聞かざるを得ないままに動くことになった。特にアッシュからしてみれば自分が我慢しなければナタリアの方がよりまずいという状況にあるということを、ナタリア本人には言わない形で我慢しなければならないためだ。

故にアッシュは『ルーク』に入れ替わって戻る形でナタリアと過ごすことになり、しばらくの時間を経て二人が結婚する事とキムラスカの王族を増やすための政策として今回に限り後室にアルマが入ることを発表したのだが、それらについてはアッサリとキムラスカの人々に受け入れられた。これは現実的に見てナタリアとだけではどうしても限界が見えていることもそうだが、ベオルブの人間ならいいんじゃないかというような信頼があったからでもある。

その為にアルマも後室という形で結婚したアッシュだが、あくまでそれは形式上・・・結婚して城にいることになったアッシュの元に時折アルマは何日か行き来し、それからはベオルブの家に戻るという行動を取るようになった。これはアルマとも子作りをしているという表向きの誤魔化しの為の行動であって、ちゃんと子どもはアッシュの子どもであると認識させるためのだ。






(フフ・・・順調なようだな)
・・・ベオルブの持つ本屋敷から離れた別邸。
そこを訪れたダイスダーグは庭の中でお腹をさするアルマと、その姿を見てルークとラムザとザルバッグが嬉しそうにしている様子に内心でほくそ笑む。自分の企みがうまくいっているという光景を前にし。
(さぁ、私もあの中にはいくか。表向きはルークを大事にすると三人に示すのもあるからな)
だからこそダイスダーグは弟妹達にも本当の顔を見せないままにその元へと歩み寄っていく。兄としての情はあるし配慮もしてはいるが、自身の野望の一部として気持ちよく動いてもらっている面々に何も悟らせないようにと・・・




















・・・それから更に時間が経つのだが、アッシュとナタリアは結婚して子どもを持つようになり王座を継ぐことになった。しかしそれはインゴベルトが年齢の問題から早めに後を継がせた方がいいと判断すると共に、ダイスダーグがその分を補うように二人を支える・・・という表向きには美談にし、本当の所ではダイスダーグが二人の首根っこを押さえて実権を握らせない政治を行うという物だった。

ただその事に関しては流石に二人も抗議をしてくることになったが、それらに関してはインゴベルトよりの言葉もそうだが子どももアルマに産んでもらった分もあって数はそれなりになったこと・・・そしてダイスダーグが静かに告げた預言に詠まれた『聖なる焔の光』の死の時期からもう大分年月も経ったことから、これ以上文句を言うというなら若い王と女王が非業の死を遂げることになるかもしれなくなる・・・との意味深な言葉に二人は顔を青ざめさせながら大人しくするとすぐに答えた。それまでのダイスダーグも厳しい言葉を投げ掛けてはいたが、明確な殺意をこもらせた言葉を吐いてきたことはなかったために。

そしてそうしてアッシュ達はどうにかならないかと周りを見渡すのだが、最早もうその時には二人の周りには二人に味方する者は誰一人いなかった。それらの人員は全てダイスダーグの息のかかった者達であり、最早二人は飾りの王と女王でしかないという状態の形で。だがもうキムラスカの王に近い者達の間でそれらを気にする者は存在しないも同義であった・・・何故ならその者達からすれば信頼すべきは二人よりダイスダーグであり、ベオルブという存在であるのだから・・・









END









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