英雄となった男の侵食

・・・預言の事実を知り、ダイスダーグはらしくもなく驚くと共に自分ならそれを簡単に回避出来るというように思っていたのが、実はそうではないと知って考えの修正を余儀なくされた。特に戦争をしたなら例え勝つことが出来てベオルブの名を轟かせることが出来ても、将来的にオールドラント自体が終焉を迎えてしまうのであれば意味はないと。

だからダイスダーグはキムラスカを乗っ取ることもそうだが滅びのきっかけとなり得る戦争自体を避けなければならないと考えざるを得なくなると共に、自身の野望についても変えざるを得ないと考えたのである。下手に戦争のきっかけになり得る行動は取らないようにすることは前提にするが、自分やベオルブの名誉を偉大なものにするにはいかにするか・・・それらの結果としてヴァンやモース達の行動を止めた上で預言の中身はこういうものだと明かした上で、アッシュ達の立場やら様々な物を用いる形でアルマを後室に入り込ませ、キムラスカの王族に繋がるように入り込んで実質的な指導者となることであった。

まず先のヴァンやモース達に預言の件は将来的な事を考えればその対処は避け得ない物であることから、絶対にそれらはやらなければならない既定路線だった為に別に構わなかった。特にヴァン達を止めねば自分達も滅びる立場にあったことや、預言についても最終的に滅びが結末となっているとあればそれを止めたいと思うのは当然だ。

だが後に出てきたアルマを入り込ませる事に関してはどういうことだと言われるかもしれないが・・・バルバネスもそうだったが王族に貴族が結婚するということは単なる恋愛結婚とは違い、メリットとデメリットを天秤にかけて行うことが前提になることが殆どであるが、貴族からして普通に考えればメリットしかない結婚は何なのかと言えば・・・王族と結婚し、親戚として名を連ねる事だ。

これは王族が国のトップでありその地位の上には行かない事には違いはないが、王族と結婚するという事は親戚ということになり下手な手出しをすれば、王族からも敵視される可能性は決して無視出来ない物になるという自分達以外の者達への相当に強いプレッシャーを得られるのだ。その他にも親戚だからこその優遇をされるということもあるが、やはり余程のヘマをやらかさない限りは王族がバックに着いているというのは心強い事と言えるだろう。

だが王族としてもそんな貴族の思惑くらいは承知の上で、そんな簡単に王族の権威など利用させないように配慮したよう動きはするし結婚相手の選定をするが・・・今回のアルマを後室にという策はキムラスカの王族の数を本気で増やさないとまずいと思わざるを得ない状況にあることもそうだが、ダイスダーグというキムラスカにとっての英雄からの申し出と何よりアッシュ達の想像以上の実状という様々な要素が噛み合ったことにより、そうすることはほぼ確定となったのである。特にアッシュ達の実状に関してが最もという形の理由であった。

ただ前二つの理由だけでも実際の所として、インゴベルト達の心証は悪くないどころかむしろ渡りに船という所であった。繰り返すような形になるがキムラスカ王族の数を誇張抜きにある程度増やさなければ将来的にお家断絶になる可能性が高い事を考えると共に、その相手を下手に慎重に探すよりは英雄であるダイスダーグの妹のアルマなら反対意見は出にくいだろう上で人格も問題はないと見て。だがそれでダメ押しになったのがアッシュとナタリアの二人の実状である。









.
22/25ページ
スキ