英雄となった男の侵食

「・・・その点ではアッシュ達のあの様子からラムザ達もそうだが、陛下達も私の考えに従う方がいいと思うだろう・・・もう奴らが年月を経ても実権など持てぬ飾りの王と女王にしてしまった方がいいという考えにな。そういった事にするには本来ならもう少し入念な準備やら何やらが必要だっただろうからな・・・これに関してはあの二人、特にアッシュがあぁいったようになったことには私にとってはいいように働いたな」
だがラムザに対して冷たい様子を見せていたのとは一転して、アッシュとナタリアの二人の事に関して都合が良かったと笑みを浮かべる。と言っても冷たさを感じさせる笑みだが。






・・・ダイスダーグは表向きはバルバネス同様キムラスカに従順に従うばかりだけでなく、ダアトやヴァンにモースの事を調べてきて動くことを進言した忠臣といったように動いている。しかしダイスダーグが本当に忠義から動いているのか・・・それに関してはハッキリと違うと言えた。なら何の為に動いているのかと言えば預言に満ちたこの世界の在り方を変える事と、ベオルブという存在を人々に偉大なものだと知らしめるためだ。

ただ前者に挙げた預言に満ちた世界を変える事に関してヴァンと目的は同じなのではないかと思われるが、ダイスダーグがそう思った理由はバルバネスが戦バカということもあるが預言に傾倒していたこともあったことからである。現に預言ならと従い戦に出て寿命をむざむざと縮めて帰ってきた時には、ローレライ教団の裏の顔を調べて知っていたこと・・・そしてバルバネスの死も実は預言に詠まれていたと預言士を脅して明かして知っていたことから、預言を信じる気になどなれる筈もないとダイスダーグは断じていたのである。ちなみにその預言士に関しては何も言わないから見逃して欲しいと懇願してきたが、そんな言葉など信用出来る筈がないと秘密裏に行方不明になるような形で始末した。

だからというか預言もそうだがダアトにローレライ教団というものをダイスダーグは信用するつもりはなく動くようにしてきたし、将来的には預言を詠む事はおろか教団をキムラスカから排除する事を目的にしていた。そしてその中で重要な要素は導師のこともそうであるが、ヴァンがそもそも行動を起こした理由が何なのかを知ったことからそれらが実現可能な物であることをダイスダーグは確信したのだが・・・そのヴァンの理由を知ったからこそ、後者の理由であるベオルブの存在を偉大なものだと知らしめるためというように変えたというか、変えざるを得なかったのだ。

なら元々のダイスダーグが目指していた物は何なのかと言えばモースから言われていた預言による戦争でキムラスカの勝利を得た後で、後にダアトやローレライ教団の排除及びキムラスカの王族の暗殺を行い、自分という存在がオールドラントを統べるという野望であった・・・この野望という点に関してはダイスダーグはバルバネスを反面教師のように思うが故に抱くようになった野心であった。表向きはいかにも流石バルバネスの子だと言われるような立ち居振舞いをしてそうした時もさも苦渋の決断をしたというように見せて、その実は自分が全てを掌握するのだと。

だがヴァンの抱えていた秘密や預言の事実を知り、ダイスダーグはその野望を諦めるというか変えざるを得なかった・・・なら何を知ったのかと言えば、それは預言に詠まれたような戦争が起きてキムラスカがマルクトに勝ってもその数十年後には病がマルクトから持ち込まれ、最終的にオールドラントは滅びることになるという中身であると共に・・・預言は本来歩む未来を詠んだものであってその中身に沿えば沿う程滅びに近付く上に、普通のやり方ではその預言を変えることはまず出来ない事からフォミクリー技術という預言に詠まれない物を使い、強引に預言の中身を回避するために動いていたのだと。









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