英雄となった男の侵食

その上でもう一つダイスダーグがバルバネスを嫌うことになったラムザとアルマの二人を産ませたことになった件についてであるが、先述したよう年齢だけで見るならむしろダイスダーグの子と言ってもおかしくないような時にバルバネスは妾の女性を孕ませるという行動に出た。

これに関して元々ダイスダーグはザルバッグという弟が九歳差で産まれたことから、バルバネスは然程色事に興味は無いというか家の存続の為に母親と結婚して行為を行ったと認識していた。その上でザルバッグがそんな年齢差で産まれたことに関しては、何らかの気まぐれがバルバネスと母の間であったからそういったことをしたくらいにしか思っていなかった・・・貴族間での結婚というのは性格が合わなくても対外的に必要だからそうすることが多く、性行為は跡継ぎ一人が産まれればもう必要ないと仮面夫婦になることも珍しくないと認識していた為に。

しかしそんな母親が亡くなってしばらくしてから、バルバネスが妾を孕ませたということに関してを聞いて、ダイスダーグは柄にもなくどういうことだとバルバネスの事を心底から正気なのかと疑った物であった。一応は貴族らしい貴族として甘さを残しつつもちゃんとしていると思っていたのに、妾を抱いてラムザまでならともかくアルマまで一年違いで作るようにしただけの熱量を見たことに。

・・・一応というか、貴族の男が妾というか妻以外の女性を抱いて子どもを作ることは頻繁ではなくとも、珍しいとは言えないような代物だった。貴族とは言え男であることもそうだが先に言ったよう事情アリで結婚する者が多いことから、パートナーとの性の不一致により身近でいて綺麗だったり若い女性に手を出す・・・というようなことからだ。

だがそんな風に手を出しても必ず許されるというような訳ではないが、貴族が妾を持つとか身近な女性に手を出すことは珍しくないとダイスダーグも認知していたが、バルバネスはそんなことはしないとどこかで考えていたのだ。ラムザが産まれる前にはもう既に年齢にして四十を既に越えていた上で、母親と仲が良かった訳ではないにしても誰か妾やメイドなどに手を出したというようなことも聞いたことなど無かった為、父はそんなことをしないのだろうと。

しかしそんな考えを知ってか知らずかバルバネスは妾に手を出したことに加えて、ラムザだけでなくアルマを一年後に作るまでに入れ込んだ・・・そんな姿勢にダイスダーグはバルバネスに対しての一度目にして最大の失望を抱いたのである。それまでは貴族としては甘さを感じられるがそれでもそれなりに尊敬していた筈の父だが、歳や立場を忘れたかのよう恋に現を抜かすように女に熱を上げる・・・だからこそダイスダーグはバルバネスを平気でラムザやアルマも兄妹なのだからというように妾を孕ませた事を気にした様子もなく言ってきたこともあり、心中で見下すようになっていったのである。戦場では確かに天騎士と呼ばれるに相応しい戦いをしているのだろうが、それ以外ではいい格好をするだけの戦バカでしかない・・・と。

ただそんなバルバネスは数年前に預言に詠まれたからということから病を患いつつも戦いに身を投じると選び、その戦いが終わった後にダイスダーグ達に看取られる形で息を引き取ったのだが・・・そんな父の事を預言が詠まれたからで動くバカだというようにまた内心では見下していた上で、自分がベオルブの家長という立場に立つ以上はバルバネスの築き上げた評判を利用しつつ、それでいて自分の思うようにバルバネスとは違う形で名声を高めていこうと決めたのである。そしてそれがバルバネスと似ているラムザであったり、アルマもそうだが同じ腹の弟であるザルバッグも利用しようとする形でだ。

ただこのように思いはするものの、ダイスダーグの中にはザルバッグもそうだがラムザやアルマに対しても兄としての気持ちが無いわけではない。一応はラムザ達も含めて血を分けた弟妹達であるし、三人共に自分の事を慕うと共にやることに協力することを明言してくれているのだ。だからラムザに関してはバルバネスに似ているその様子や性格に心が冷えるのは感じてはいるが、だから気に入らないから始末するといった短絡的な事はするつもりはない。むしろその性格からこれからも自分の為に頑張ってもらおうと思っているのである。









.
20/25ページ
スキ