暗の知略で望む乱

「そうですか・・・なら縄を解いてその服は着替えていただかなくてはいけませんね。アッシュなんて人間、もうこの世にいないんですから」
「・・・っ」
その返事に即座にアッシュを死亡したものと扱うイオンに、アッシュは縄を解くマルクト兵を尻目に舌打ちしそうな様子を見せる。
「すみませんが、彼に適当な服を渡してくれませんか?ジェイド」
「はい・・・すみませんが、ついて来ていただいてよろしいですか?服はもちろんですが、着替える為の部屋も必要でしょう。ご案内します」
「・・・わかった」
そんなアッシュに前の無礼さが嘘のように影を潜めたジェイドをイオンはあてがい、丁寧に誘う言葉にアッシュは従い、ブリッジを出ていく・・・
「・・・フリングス少将、手筈はどうですか?」
「はっ、順調だと報告が届いております」
それを見届けイオンは空気を固く引き締め、フリングスと言葉を交わす。
「カイツールでは既にヴァン謡将を捕らえたとの情報は入っています。六神将がタルタロスを占拠した件についてと話を引き合いに出したら、やはり事を荒げるべきではないと慎重になりすんなりと捕縛に応じたようです。また、六神将がタルタロスとともに爆発したという痕跡は全て片付きました。目撃者などもいなかったため、大詠師にその情報が渡ることはないでしょう」
「結構です・・・後はアニス、貴女が偽の報告書をバチカルに送れば情報の撹乱は完了です。カイツールに着いたら僕の指示通り鳩を飛ばしてくださいね」
「わかりました、イオン様」
ヴァンの捕縛とタルタロス爆破の隠蔽、その二つを聞いてイオンはアニスに向き直り指示を出す。丁寧に敬意の見える頭の下げ方を見て、イオンはそっとほくそ笑む。
(ふふふ、待ってなさい髭に樽豚。世にも恐ろしい目に合わせてあげますからね・・・そしてその後でルークと・・・ふふ)
イオンの目に浮かぶのはヴァンとモースが自らの前に倒れ、はいつくばる姿。そしてその後の自らの思い描くルークとの幸せ・・・
その想像を実現の物とすべく、イオンはゆっくりタルタロスの進む先を見据えた。官兵衛という予想外の傑物から練ってもらった策略を実行するために・・・









・・・そして同じ頃、マルクト軍が駐留するセントビナーの基地内部にある薄暗い、牢屋の中。その牢屋の中の通路を歩くルークと官兵衛・・・そして二人はある牢屋の前で足を止める。そこは・・・
「ルーク!?貴方何故ここに!?」
「ルーク!?ルークなのか!?」
ティアとガイが入れられた牢屋だった。
ルークの姿を目視するなり二人は立ち上がって牢屋の柵を掴みティアは責めるように、ガイは何故と言わんばかりに声を上げる。
「落ち着けよ、二人とも。今からお前らがそこにいる訳を言うからさ」
「何が落ち着けなの!?早く私達をここから出しなさい!私達が何をしたっていうの!?」
「そうだぞ、ルーク。俺達は何もしていない。だから早く出してくれ」
そんな二人をなだめようとするが、興奮冷めやらぬ様子のティアと柔らかに言葉を投げ掛けて来るガイはここに囚われている訳を聞こうともしない。
「あー、ちょっとここは小生に任せてくれ。話を聞いた通りだ、お前さんの言葉をコイツら聞こうともしていない。ならばこそ、ここは小生の出番だろう」
「官兵衛・・・ああ、お前に任せるよ」
そんな様子に後ろについていた官兵衛はルークの前に行き、視線を送りながら自分がやると言い出しルークは首を振りそれに従う。









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