英雄となった男の侵食

・・・二人が口にしているアッシュのナタリアに対する操を立てたような行為に気持ち。これは幼い子供が好きな者に対しての誓いを固く持つという意味で言うなら、別に悪いと言えることではない。なら何が意外だと言えるのかと言えば、アッシュが未だにそんな気持ちを持ち合わせていることだった。

ナタリアに関してはルークと会う度に本当の『ルーク』であったアッシュとの幼い頃に交わした約束という記憶を求め、周りからの言葉など聞かずにずっとそれらを求めてきた。その事についてをダイスダーグやラムザ達も知っていたから、かつてを求めるにも程があるというような呆れにも近い気持ちを抱くだけで済ませていた。王女というにはあまりにも夢を見すぎていると。 

しかしアッシュまでもがそうだというような様子だったことは二人からしても意外というか、有り体に言ってしまえば正気を疑うものだった・・・ナタリアがそういった綺麗な物を夢見るといった様子を見せていたのは百歩譲って汚いとか、黒い思惑に関わらないようにインゴベルトを始めとした者達に気遣われていたからある意味では仕方無いというように捉える事は出来る。しかしアッシュに関しては別だ。

何しろアッシュはルークと入れ換えでヴァンの元に神託の盾に置かれる形になって、七年近くもの時間を王族や貴族としての生活から遠ざけられていたのだ。その上で二人もアッシュに会ったからこそ言えることとして、王族として接するにはあまりにも高圧的であることもだが言葉遣いの乱雑さがあまりにも酷いことから、ナタリアと比べて世俗に染まるなんてレベルではない程に堕ちたと感じたのである。高潔であったり清廉というような考え方は無くなってしまったのだと。

だからこそというかダイスダーグにラムザはそういった様子から、アッシュは神託の盾にいる中での経験から女遊びの経験くらいはあるだろうと見ていたのだ・・・年齢に関しては成人というにはまだ早いと言えるし娼館に娼婦といった場所に存在は一見は主な活動拠点としているダアトには見当たらないが、金さえ払えば年齢など些細な物と見られるしそういった場所や存在は隠れてこそはいるが知っている者は知っている。だから軍といういつ命を落とすか分からない人物達・・・それもヴァン達のような裏で活動する者達なら、そういった場所や存在を知っていてアッシュも利用しているだろうと。

しかしそれがナタリアとの子作りに関してをダイスダーグが切り出した時に、そういったウブとも言える反応だったことが二人の予想を覆したのであった。明らかにそういったことに手を染めてそうな粗野な振る舞いをしているのに、実際はそんなことをしていたとはとても言えないような様子によりだ。






「・・・だがそういった様子を見たことに、私は瞬時に考えを切り替えた。確かにアッシュは神託の盾として生きてきたことで粗野な立ち振舞いやらキムラスカへの不信を抱いたりと様々に変わったのだろうが、ナタリア様に対する気持ちは強く残っているというならそれを上手く使えば、こちらの言うことを聞いてくれるだろうとな」
「・・・確かにそう考えれば、ナタリア様への気持ちがあるのならアッシュの気持ちだとか考えは誘導しやすくなるでしょうね。キムラスカにいなければナタリア様の事が危ないからと」
・・・しかしダイスダーグも伊達にキムラスカ軍の軍師として活躍してきたわけではない。
すぐさま考えを切り替えるようにしたといった話をしたことにラムザも納得といったように漏らした。ナタリアへの気持ちが思い切った行動を取ることを制止させられる材料になると。









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