英雄となった男の侵食

「言っておくがそれらの中身に関しては本当だ。当時出産に関わった者達に話を聞けば事実を黙らざるを得なかった上で、本当のナタリア様を埋めたという場所を調べるとそこから乳児の遺体が見付かった。これはその時にナタリア様がバチカルから抜け出した上で我々にナタリア様を諦めてもらうためにと事実を明らかにしてきたのだ・・・ナタリア様は偽物なのだからもうこのまま見捨てようとな」
「あの野郎・・・!」
そんな姿に嘘ではないというよう話をしていくダイスダーグに、アッシュは盛大に怒りと共に拳を握り込むがそんな様子に対照的に呆れたように静かに首を横に振る。
「・・・我々としては以前からモースやヴァン達の事については疑っていた身だ。だからこそそういったことを聞いたのもあってそんなことをしたのかという気持ちもあったが、同時にこのようなことを許してはならんと見てモースの事を即刻に捕縛したのだが・・・こうして時間が経ったことで問題となったのはナタリア様が王族の血を引いていない事が確かなこともだが、お前が本物の『ルーク』だということでこれからの事を考えればとてもナタリア様がルーク様との結婚など望まんだろうということだが・・・お前が殺されてもキムラスカに戻りたくないというなら、もうナタリア様にはルーク様と結婚してもらうしかない。しかしお前が相手でなければ絶対に嫌だと拒否をしたり、お前がそうした考えから死を選んだことをせめてものお前の名誉なり何なりとの為に広められるような事をされることになる可能性も、あのお方のお前に対する気持ちの面から考えられない訳ではない・・・故にこそそういったことになるくらいなら、我々は最悪の場合としてナタリア様にも死んでもらうことは選択肢として考えている。お前が意地を張って死んでルーク様の事を拒否するというのであれば、もう後はルーク様にキムラスカの王族の次代を担っていただくしかないと見てだ」
「!・・・ナタリアを殺した上で、あの屑にキムラスカの次代を担わせる、だと・・・!」
「言ったであろう、保険だと。確かにレプリカというその身体の事はあるかもしれんが、お前がキムラスカに戻ることを拒否した上でナタリア様がルーク様との結婚及び子を成すことを拒否されるというなら、ナタリア様が本当は王族ではない以上隔世遺伝で王族の特徴を引き継いだ子を期待など出来ぬから、他の者との結婚もそうだが子を成すことすら許される物ではない・・・だからこそルーク様の存在は消させる訳にはいかんのだよ。ナタリア様がお前が意地を張って死んだと聞いたならどういった選択を取るかはハッキリとはしていないが、殿下の性格から衝撃を受けて今出した例えのような事を仕出かしかねんから、最悪殿下には自身の入れ換えの事実を明らかにした上で言うことを聞いていただかねば・・・殿下には退場していただかざるを得ないことも考えてルーク様を残さねばならないとな」
「っ・・・!!」
そのまま熱くならず淡々といったようにいかにナタリアが取りかねない行動もだが、それらに対してルークを残すこと及び最悪の場合・・・それこそナタリアを殺すことも有り得ると言われ、アッシュは悔しげに歯を噛み締めるしかなかった。まがりなりにも幼少期を王族として過ごしてきた事から王族の血を残すことの意味を理解出来ない訳でもないが、ダイスダーグがそれらの話から何を言いたいかの真意を理解してしまったからだ。









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