暗の知略で望む乱

・・・余程何かの境地に立った人間でなければ罪の減刑は罪人にとっては願ってもないという心理、そして重い刑に服している人間を使うことにより人員の被害を無くそうという策としての順当さ。成功に至るに十分な二つの要素を兼ね備えた罪人を使うという案を、ピオニーは許可した。

ただそれでも元は罪人で、いつどこで逃げ出すかわからない。そこでピオニーは過去に戻ってから徹底した教育を施したジェイドに、脱走をしないよう正規の軍人何人かと共に罪人達を監視下に置かせるように命令した。その甲斐あってタルタロスが襲われるまでは脱走したものなどおらず、ジェイド以外の正規の軍人達もエンゲーブで役目御免と無事に離脱した。

・・・全ての条件が揃えられた。その上でタルタロスは以前のように襲撃され、以前のように捕まったフリをしたルーク達は最初から牢屋に捕まっていたように見せていた官兵衛の隣に連れられ、投獄された。流石に手枷に鉄球を付けられベッドに寝そべっていただけの官兵衛を危険視したものはおらず、後で処理すればいいと神託の盾にスルーされた。鉄球を使う戦い方を官兵衛自身は不本意としながらも得ていたとも知らずに。

そこにイオンにジェイドと同じように教育され直されたアニス(こっちはジェイドに比べ大分精神的にくるやり方でやられた為、別人のように大人しい)が来て合流した後、官兵衛がいた牢の中に作った隠し通路を通りルーク達はタルタロスから脱出した。そして同時に仕上げとして官兵衛はタルタロスの内部の所々に仕掛けていたタルタロスが消し飛ぶ程の火薬を一斉に爆発させるようセッティングしたリモコンのスイッチを押し・・・タルタロスを爆発させた。おびき出されたとも知らず、ノコノコと勝った気でいる神託の盾全てを消し飛ばすように(尚、ティアはタルタロスを爆発させる前に隙を見た官兵衛が強制的に後頭部を手枷で殴り気絶させた。元々協力させる気がなく寧ろ邪魔な存在だった為であるが、それ以上に官兵衛は女巫と自身が呼ぶ少女より反りが合わないと感じて気絶させた方が自身の心の安定に繋がると判断した為・・・更には大分大きいイオンへの不満も晴らす為である。だがそれは言わない、だって言ったら不幸になるから。それが官兵衛の持つポテンシャルで、クオリティ)。

・・・裏でこのようにマルクトが策略を持って行動していたことを、アッシュは知らない。そしてマルクトはけしてそれを表立たせるようなことはしない、何故ならアッシュの言うようダアトの立場を悪くするためだ。



「答えられませんか?まぁいいでしょう、どうせ貴方のそのニワトリ頭じゃ難しい事は考えられないようですからね。けどルーク・フォン・ファブレに戻るかどうか、これだけは答えていただきますよ。どちらも選ばない、もしくは自らはアッシュだなんて答えを返したら・・・どうなるか分かりますよね?」
「っ・・・」
そして口ごもるアッシュに罵倒付きでイオンは笑顔で最後の選択を口にし、否応なしにアッシュを追い詰める。
「・・・・・・わかった、俺は『ルーク・フォン・ファブレ』に戻る・・・それで、いいだろう・・・」
無駄なプライドの葛藤の末、アッシュは結局生き残る為の『ファブレ』に戻る道をうなだれながら選んだ。



・・・その瞬間、自身の矜持が粉々に打ち砕かれ生きる屍となる道を選ばされたとも知らず。










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