英雄となった男の侵食

「とは言え一応はこちらも殿下には何も言わなかったという落ち度は確かにありますので、そこを考慮して貴女の処分に関しましては王女殿下としての立場の剥奪というような事は致しません」
「なっ・・・は、剥奪なんてそこまでされる程の事だったと言うのですか・・・!?」
しかしそれでも自分達にも落ち度はあるからと温情をかけるような甘い処遇を下す事をダイスダーグは口にするが、ナタリアが剥奪という言葉に盛大に揺れた事にそっと目を閉じながら言葉を続ける。
「そこまでされる程・・・と殿下は言われましたが、王族ではない貴族が同じようなことをすれば良くて地位の剥奪であったり地位が下がるであるというくらいで済み、悪ければお家断絶となっても当然と言えて仕方無いものになります・・・独断専行が許される状況はその行動により十分な成果を挙げるという結果を出せたならといった限られた場合になりますが、殿下のやられたことに関しましては我々のやろうとしていた目的もありましてとても貴女が許されると見られる結果ではありません。殿下は王族という立場にはありますからお家断絶ということは出来ませんが、陛下の意志が固ければそれこそ殿下はもう王女と名乗ることは許さないしその地位を剥奪する・・・という決断を下されても何らおかしくはありませんでした。ですがそれらについてをやりすぎだとおっしゃられるような事を言えば、却って殿下は陛下の不興を買うようなことになるでしょう。我々にも落ち度があったからこそ甘い処遇を取ることを考えていたのに、当人である殿下はそもそも自身の非があると考えてすらもいなかったというような様子を見せたなら」
「なっ・・・わ、私が独断で動いたのは確かですが、自身の非がないというように考えていたとは言い過ぎではありませんか・・・!?」
「でしたら此度の殿下の行動は自身で考えたなら、どのように自身を罰するのが最も収まりが良いというようにお考えでしょうか?」
「えっ・・・わ、私が自身を罰するなら・・・!?」
「はい。このような場合に上から処罰を命じられるのは下の者の立場からすれば当然と言えば当然ですが、上の立場にいる者が過ちを犯した場合に責任を逃れようとする者もおりますが、本当に自身に責任があると思うならばこそ逃げずに責任を取ろうとする事を考える物だと思われます・・・だからこそ殿下にお聞きしたいのです。殿下が自身の行動に非があると思われるのでしたら、どのような罰を自身に与えるというか課すのがいいと思われているのかを」
「そ、それは・・・その、私は・・・」
そうしてダイスダーグが本来ならこれくらいはやられて当然といったように話を進めた後、自分ならどういったように自身に罰を与えるのか・・・というように投げ掛けると、ナタリアは反論したそうにはしていたがしどろもどろに声と視線を揺らすしかなかった。いきなり聞かれた事だと言っても、明らかにそんなことを考えていなかったといった様子で。






・・・この辺りでナタリアが厳しいと言った理由は当人の性格もあるが、結局の所として勝手はしたけれど自分に非がないというような気持ちがあるからであった。そして何だかんだ言われてはきたけれど、終わりよければすべてよしというように感じていたのもある形で。

だがダイスダーグもそうだがインゴベルトもそんなナタリアに何もせずに終わらせるつもりはなかった。ここでナタリアに何もなしでは絶対にいさせてはいけないという考えから。









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