英雄となった男の侵食

・・・ナタリアが城を抜け出たということ。これはダイスダーグもそうだがインゴベルトがまだモースやヴァン達を騙す為にその思惑に乗ったように行動をしていると見せる為、アクゼリュスという場所に親善大使一行を送ることについてを決めたのだが、本来そこにナタリアを行かせるつもりなど事実を知る者達からすれば全くなかったというか、行けと命令など出していなかった。むしろハッキリ止める形を取っていた。

しかしここでナタリアは親善大使一行に同行する為に命令を下されていないのにも関わらず、勝手に城を抜け出してまで親善大使一行へと付いていったのである・・・この事に関してはインゴベルトもそうだがダイスダーグもナタリアがそんなことをしたことに関して、予想外の事を仕出かしてくれたと共に自分達の中で共有していた事実についてを話さなくて良かったという考えになった物であった。この事実から考えればナタリアに秘密を話していたら十中八九などという話ではなく、自分勝手にこうすれば最善の結果になるだろうと暴走するだろうと見てだ。

だからこそというか改めてダイスダーグやインゴベルト達としてはナタリアを引き込まなくて良かったとなった上で、ダイスダーグ個人としてはナタリアに対しての気持ちが冷え込んでいったのである。本来なら侯爵という立場にいれど流石に王族相手では地位や立場を笠に着た行動は取れないのだが、そんなものなど関係無いといった事をしていこうというのを考えていくくらいに。






「・・・それらの事についてはザルバッグより道中でお聞きしていることかと思われますが、インゴベルト陛下は殿下に対して何も話さなかったことに関しては済まないという気持ちは少なからずはあっても、それらを大いに上回る形で貴女に対しての失望を感じられたとのことでした。そして事実を先に話していたならそれこそ貴女が独断の勝手で動いて、失敗したならこんなことになるなんて思っていなかったと自分が選んでしまった行動なのに、自分の責任ではないというように言う光景が目に浮かんでいたと」
「お、お父様がそのようなことを・・・!?」
「間違いではありません。その上で後に陛下より呼ばれる事になるかと思いますが、その前にこうして私がここに話をしに来たのは私から先に今後について殿下へ処分を告げてくれと陛下より申し上げられたからになります・・・勝手に城を抜け出した事についても含めて、貴女に厳しく言いつけるようにと」
「お、お父様がそんなことを・・・う、嘘ですわ・・・!」
「嘘かどうかに関しては後で陛下より呼び出されることになった際に自身でお聞きください。私が今からお話しすることは陛下からお伝えするより、私からお伝えする事でせめて陛下の苦心を減らすための発案であると共に・・・陛下の意志である事には間違いないのですよ」
「っ!」
更にインゴベルトは全てを承知の上でダイスダーグに任せたのだと平然と伝えると、ナタリアは顔色を青くして息を詰まらせるしかなかった。ダイスダーグとの付き合いはそれなりに長いからこそ嘘をつかれているとは思わない事もだが、だからこそインゴベルトの言葉というのは確かなのだということを感じて。









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