きっかけとボタンのかけ違いがもたらす関係

ただルークに関して言えることとしてだが、ルークは自分がアッシュの偽物だという自覚を持っていないことが一番の問題である。これは後の技術の改良である程度の知識を造り出された際に付けることが出来るようになったが、その時はそんなことが出来なかったからこそ説得が簡単に出来ないという確信があった・・・ルークからすれば自分は記憶を失っても自分がルークだと思って生きてきたし教えられてきたのに、それが実は嘘だったということに加えて自分達の都合の為に造り出したという事実を知れば間違いなく・・・ヴァンやガイ達の事など一概に信じられる状態になどなれる筈がないと。

だがそういった話を受けてもガイの気持ちが変わることはなく、その時になったらというのもそうだがそうだと明かすまでも使用人として真摯に向き合うと決めたのである。ルークが何も知らない子どものような存在であったのも相まって、自分がやれるだけのことは全力でやっていこうと。






(・・・頑張っているな。今のこの様子なら問題はなさそうか)
・・・そうして屋敷の中庭に出てせっせと庭の植物を整備していくジャキは、中庭の中央でルークと剣の訓練の為に剣を合わせているガイの姿を横目に内心で大丈夫というように漏らす。
(今はこうしてガイもそうだがヴァンも秘する所はあれども思うところがないままに接しているが、私が何も言わずにいたらと思うとどうとも言えぬ気持ちになるな・・・)
そしてそのまま過去の自身の発言についてを思い返す。それらが無ければこんな未来になっていなかっただろうと。






・・・サラがジャキの予知能力を信じたこともそうだが、そもそもはジャキが見た予知は自分が動かなければとても今のような状態になどなっていないばかりか、むしろその真逆な状態になっていただろうというのが見えたから発言をしていったのだ。先に言ったようにホドでガイを除いたガルディオスを生き残らせることが出来なければペールとファブレに入り込んで復讐をすると意気込み、ヴァンもヴァンで預言の中身もあって世界を壊して自分が作り直すといった行動を取ると。

そんな行動を止めてもらうと共に協力してもらう為にジャキは見た予知の事を話したのだが、どちらかと言えばジャキからすれば話さざるを得なかった・・・というのが正直な所だったのである。ヴァンの事に関しては特にと言える形でだ。

ジャキは性格的にホド戦争の頃から子どもとしては非常に内向的というか、姉であるサラ以外に心を開かないような性質を備えていた。それは両親達の死の事実に加えて、教団の実態があったことから姉以外を信じる気になれなかったことからそうなったのである。しかし予知で見た未来の先に成長したヴァンが行動する一連の行動の流れは、姉と静かに暮らせれば世界の事なんかどうでもいいと思っていた安穏とした考えを粉々に打ち砕いたのだ。何せヴァンの行動が成就する未来が訪れることになれば、世界そのものが終わると共に自分に姉共々死んでしまうということになるからだ。

そこまで見てしまえば流石にジャキも自分や姉が生きるために見ず知らずなんて事は出来る筈もないとサラに予知の中身も話した上で相談して行動を起こしたのだが、そんな予知を見たからこそヴァン達に対する姿勢は排他的なままでいられないとジャキなりに向き合っていったのである。ヴァンに関しても勿論だが、ガイもガイでガルディオスを含めて放っておけば後の禍根に盛大になりかねないからという・・・今の当人達に聞かせれば盛大に表情を歪めるだろうが、こいつらを信用など到底出来ないからこそ取った行動だという本音があったことを隠す形でだ。









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