殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

「・・・もうそろそろしたらダアトが混乱し出す頃か・・・こんな形で離れることになるなんて・・・」
そうして石碑から遠くに見えるダアトを見つつ、タメ息を吐くように声を漏らす。






・・・ハヤテからしたらダアトという場所は嫌いではなかったというか、居心地はそこまで悪いというものではなかった。ただあくまでそれは自分の立場的にゆっくりしやすいという意味であって、ダアトの暗部までを含めた在り方にアニスの両親のような考えのない者達についてはいい気はしていなかった。だがそれでもダアトにいたのは前世のように人のいい笑顔を浮かべながら人を信じたり手を貸すなんてことが単純に出来なくなったからこそ、自分に関係しないなら目を瞑るということをすれば楽に生活出来ると見たからだ。

事実それは正しくてダアトで暮らす内に孤児として家族を失った子どもが増えたからと受け入れる事もあった上で、預言には平穏に生きられるって詠まれてたのにと泣いている子どもをなだめることに従事することはよくあった・・・教団に預言の事を信じていれば何の問題もないと考えていた子ども達を立ち直らせた上で、尚且つ教団や預言に対して不信感を持たないようにしてほしいと大人から面倒な注文をオブラートに包まれた言葉で頼まれる形でだ。

そういった事も経験してきたハヤテは子ども達には同情はしつつも、教団の人間全てとまでは言わなくとも地位の高い者達を信じる気にはならなくなると共に、何かあればいつでも離れるようにしようとは頭の片隅に置いていたのであるが・・・自分の感情に従う形でやったことであり後悔はしてはいないとは言え、こんな形で去るとは思っていなかった為に。






「・・・ま、いいか。取り敢えず港まで行って早く船に乗らないと、追手が来る可能性もゼロじゃないからね・・・」
だがすぐにハヤテは表情を元に戻して港の方へと歩き出した・・・やったこと自体に後悔はしていない上に、孤児達に対しては何も知らないからこそ何も言わずに消える申し訳無さは少しはあっても、ダアトに対して思い残すようなことは全く無かった為に・・・


















・・・そうして後の結果を言うなら、ハヤテはダアトから無事に逃げ出すことには成功した。やはりというか教団のNo.2であるモースが殺されるという事態になったことに、ダアトの上から下まで引っくり返したような大騒ぎになったことでしばらく犯人捜しより事態の沈静に時間を費やし、犯人捜しに舵を切った時にはもう既にハヤテは船に乗って時間が経ってしまっていた為にアリエッタの魔物での追跡も出来なくなったのだ。

故に最早ハヤテに追跡の手が向けられることは無くなったのだが・・・その後については人々が大いに騒いでいたのが何だったのかというよう、モースの後任は然程時間を置くことなく発表された上で導師イオンも公に復帰という段になったことで騒ぎは収束になったのだ。

ただその中で一人事実を知るアニスはハヤテのやったことに関して両親が殺されたということから調べを受けたが、当人が動揺を隠せないままに口をつぐむ様子に両親が殺されたショックもあってこうなったのだと勝手に察されたことで、特に疑いをかけられることなく解放された後に・・・スパイを主な役割とした導師守護役としてではなく、大勢いる神託の盾の一人として活動することになった。ハヤテの考えたようにもうスパイとして立場を擁立出来ないと見られた上で、本物の導師の代わりに就いたレプリカの導師に他の少女が就いたのを遠目から確認する形でだ。

ただその事についてをアニスは告発することなくこれから生きていくだろう上で、時間は進んでいく・・・アニスがその立場に就かなくなった上でモースは殺される事になったがそれでも大筋は変わることなく、だがその裏でハヤテが行動を起こしたことにより本来の未来の流れが変わっていくことを知らず・・・










END









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