殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

「・・・これに関しては推測の域を出ていないから、そうならないかもしれないとも言える。でもそうならないかもしれないということに期待してもしそうなったとしたなら、その時には君はスパイの立場から逃げ出そうとすることは出来なくなるだろう。そしてもっと言うなら謡将がモースのやり方を知っている可能性はフォミクリー技術を使うようにと提示したことから考えてみると、そういった暗部での行動に関して知らないとはまず言えないだろうと見ているし・・・流石にモースと違って実力的に謡将を暗殺なんて気軽に出来る筈もないから、他にどんな人物達がいるのか分からないのもあって手出しをするのはよそうって思ったんだよ」
「っ・・・だからそれで、ハヤテはパパ達を殺してダアトを出ようって思ったんだ・・・最後にパパ達を殺して、心残りを残さないようにって・・・」
「そうだけど、君が僕に気持ちとしてどうにかそれを止めてもらえないか・・・というのは今の様子から察しているよ」
「っ・・・それは・・・」
それで主にヴァンについてのもしもの可能性に関してを話していくハヤテにアニスは複雑そうながらも理解を示していくが、その複雑さは両親に対しての想いがあるのだろうと問い掛ければ途端に視線をさ迷わせた。
「・・・君の気持ちは分からないでもないよ。でもハッキリと言わせてもらうが、二人に対してどんな話をしてもそれは無駄になるどころか、却って君が苦しむだけになると思うよ」
「えっ・・・ど、どういうこと・・・!?」
「まず言えることとしては借金やスパイの件はモースにひいては教団の暗部がやっていたことだって言っても、それを信じる気はないのは当然どころか下手をすればあの二人ならそれは嘘ですよねっていうように気軽に言いに行くだろうし、なんならそんなことなんて有り得る筈がないだろうって周りに言いかねない可能性があるからだ。あの二人の性格からして教団がそんなことするなんて有り得ないって疑いなんか一片も抱かないだろうからこそだと思うから、周りにもそうだろうって同意を求めてアニスや僕の言うことは考えすぎだって否定するためにそうすると見ているが・・・教団の暗部側からしてみればそんな話が広まるなんてのは避けたい事だ。暗部からしたらそんなことをしてるなんて噂になればその情報の出所は何処だってなるだろうし、その出所を突き止めたら両親は百歩譲って全く信じてないだろうからまだ良しにしても、君は間違いなく僕の事を含めて事実を知ったことから口封じにかかられる可能性は極めて高くなる。両親には適当に遠征の任についたとでも言って、後にその任で戦死したって辺りで殺された事実を誤魔化されてしまう形でだ」
「っ!?」
だがそんな姿を見た上でもしもの未来についてを口にしていくハヤテの残酷とも言える推測に、アニスは絶句して顔色を青くするしかなかった・・・両親に話をして説得しても実を結ばないどころか、逆にその話から自身だけが殺される可能性が極めて高いとの事に。
「僕の話が決して大げさではないというように感じただろうことは、君の今の反応からすぐに分かるよ。だがそれでもまた君が辛いだろう事を承知で言うが、僕から言わせればあの二人の存在で君が生きている間はずっと君は重荷を背負うような生活を強いられることになる以外にないと思う・・・悪意がないから仕方無いだとか二人の事が好きだからとかで誤魔化そうとしてもその後にするだろう借金の事もあるし、それこそモースの代わりに来た誰かによって借金の返済を待つからスパイをしろというような事を言われるようになるとかね。そしてそうなったら君が無事にその状況から逃げ出す事はそうそう出来ないのは確かだと思うし、二人をどうにか説得なんて言うのは今言ったようにとてもそのリスクの事を考えたら勧められたモノじゃないよ」
「・・・そん、な・・・どうしようもないじゃん、それってもう・・・」
そしてハヤテが両親が生きている限り苦境に陥り続ける以外にないだろうと告げると、アニスは呆然としたようにうつむきながら絶望した声を漏らすしかなかった。どうしたところで両親が生きているならアニスが辛い目にあうしかないとアニス自身がよく理解したというよう。









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