殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

「驚くのは無理もないっていうか、そんなことを正直に明かしたらダアトに限ったことじゃなくて僕を受け入れてくれる所なんてありはしなかっただろうからね。だから預言に詠まれたからダアトに来たって嘘をついて入り込んだんだけど・・・モース達に関してはアニス自身のせいじゃないのに理不尽を押し付けてくる奴らにイラついたからってことでやったことなんだよ。あれを放っておくようなことをするのは僕の精神衛生上、すごく気持ちのよくない事だって思ってね」
「そ、そうなんだ・・・で、でもなんでその事を私に話したの?そのことを私に話してもハヤテには何の得もないんじゃないの・・・?」
「一応大まかには三つ程理由はあるよ。まず一つ目は僕はこの後ダアトから逃げるからだ」
「えっ!?」
そんなアニスにハヤテは普通に話を続けていく中で何故そんなことを話すのかと聞くが、逃げるとの言葉にたまらず声を上げた。なんで逃げるという結論を出すのかと。
「何でって思うかもしれないけど、これに関してはモース達を殺されたなら他の教団の人達が躍起になって犯人探しに来るのが目に見えているからさ。何せ大詠師が殺されるなんて事態に発展したんだから、教団側としちゃ犯人探しは絶対にしなきゃならないって思って血眼になって動くだろうけど・・・だからこそ犯人を見付けるためにアリエッタの魔物を使って犯人の特定に来ることを僕は危惧しているんだよ。証拠が見付からないなら誰が殺したのかを残った匂いから特定出来ないかって動く形でね」
「あ・・・魔物の鼻ってすごくよく利くって聞いたことは確かにあるかも・・・」
「そう。だから素知らぬ顔をしてダアトに残ろうとしても、そうなったらシラを切ろうとしてもどうにもならなくなることは目に見えている。だから僕はこの後にダアトを出るんだ・・・あいつらを殺したからその裁きのために殺されるなんて事は、僕としては気持ちよくないからね」
「そう、なんだ・・・」
そうしてハヤテが語る逃げる理由の中身に関してに、アニスは複雑そうながらも理解の声を漏らす・・・アニスからしたら手段の是非はともかくモース達から解放してくれたハヤテだが、それでダアトに居続けることが難しいからこその逃亡と判断することにしたことに。
「そして二つ目だけど、もしそれで仮にダアトにいたままで見逃される可能性があるとしたなら謡将が僕がやった事だって掴んだ上で、僕を手駒として使う事に舵を切ってくるなんて可能性を無くすためだよ」
「え・・・どういうこと・・・?」
「フォミクリー技術についてはアニスもさっきの話で聞いただろうけど、謡将に関しては何を目的に動いているのか僕は掴みきれてないんだ。でもそんなフォミクリー技術を用いるだったり所持している事に関して、ダアトの為になんていうような耳触りのいい目的があるとは僕は思っていない・・・簡単に想像するだけでも導師が死ぬんならフォミクリー技術で作ったレプリカを新たに配置すればいいっていう前例を作ったんだから、また別の人物が死んだか都合が悪いから殺したってなったらフォミクリー技術を使えばいいって言っていって・・・気付けば謡将以外のダアトの上層部がまるっとレプリカで雁首をすげ替えられてた、なんてこともやれなくはないと思うんだ」
「っ!?・・・そ、そんなことを謡将が・・・!?」
「今のはあくまでも僕の想像だから、絶対にそうなるとは限らないし目的はまた別だっていう可能性もある・・・でもだからといってフォミクリー技術についてどういった目的があって保有してるかって聞くのは、導師の死を隠すために使うって時点で後ろ暗い思惑があるだろうって言うのは想像がつく。そんな謡将に話をしに行って目をつけられたなら殺されるか、もしくは僕を殺さない代わりに手駒になれって言ってた可能性も想像出来るけど・・・そうなったら後は謡将の言いなりになるくらいしか生きる手段はないと思ったから、殺される可能性も否定出来ないのもあってダアトに残らない方がいいって考えたんだよ」
「・・・そう、なんだ・・・でもそう聞くと、ハヤテが安心出来ないって言うのは分かるかも・・・」
それで続けてと語る二つ目のヴァンに関して危険性を感じているといった話の中身に、驚きを浮かばせたもののアニスも次第に納得していった。ヴァンの目的が不透明な以上、下手にヴァンを信用することなど出来ないということに。









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