殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

・・・そうしてハヤテは教団の人間が身にまとうローブを着てフードを深く被った上で、教会の中を歩いていった。

これは地位の高くない大抵の教団員は顔を隠すようにフードを被って動いているのを知っている上で、特にそれで誰が誰かなどというのを互いに気にする事などそうそうないという性質を利用し、いつにここにいたなどというように顔を覚えられないために教会内を歩き回る為の常套手段であった。下手に普通の服を着ている方が逆に浮くのはよく分かっていた上で、誰が誰かなどと仲のいい相手だと認識していなければ顔をわざわざ覗き見てくることも無いために。






(・・・ん?何か聞こえてくるな・・・)
・・・そうして大詠師の部屋の前に来たハヤテ。本来なら大詠師であるモースの部屋の前には護衛である兵士が立っているべきであるが、ローレライ教団の本拠地であるダアトで暴れるような不信心な者達などまず出てこないことから治安的に心配されていないことに加えて、モースの裏の顔を考えれば下手な兵士を近くに置いて話を聞かれるのを避けたいということから護衛の兵士は普段は扉の前にいないのである。
そんな事情を知っていることに加えてモースが表向きは厳格な人物と見られていることから、大詠師の部屋近辺に不用意に近付かないようにという暗黙の了解が信者の中にある・・・故にハヤテは周りに人がいないことを確認しつつ扉の前に平然と立ったのだが、そこで聞き耳を立てていた時に中から声が聞こえてきた。
(・・・中にはモースだけじゃなく、アニスもいる?何かモースが言っているけれど・・・・・・導師守護役になって導師の情報を自分に流せ?それを断るなら・・・今すぐ両親が背負っている借金を返すようにさせる?・・・ふ~~~ん・・・)
そうして中にいる人物が誰なのかに関してを会話の中身から察していくのだが・・・その中身を聞いていくとハヤテの心は凄まじい勢いで冷えていって、静かにその場を後にしていった。何事もなかったかのように・・・


















・・・そうして夜になり、人々が眠りにつく時間になるのだが・・・
‘スパッ’
「がぁっ・・・!?」
・・・そんな夜中の大詠師の部屋にハヤテは忍び入り、ベッドで寝ていたモースに近付くや否や右手に持っていたナイフで躊躇いなく首元をかっ切った上で、苦悶の声を上げたと同時に左手に持ってきていた大きめの枕を顔に押し付け・・・本格的に暴れる前にハヤテはベッドに乗ってモースに馬乗りになり、枕と共に体を抑え続けると・・・血が枕をどんどんと染めていくと共にモースの抵抗しようとする声も動きも鈍くなっていき、そして最後には枕をどかそうとしていた手がベッドに落ちた後にピクリとも動かなくなった。
「・・・予想はしていたけど、本当に力は無かったな。やっぱり偉そうに口だけしか出さないデブじゃこんなもんか」
そうしてハヤテはベッドから降りて人を殺したばかりだというのに、返り血を枕で抑えたのもあってか何もなかったかのように平然とした表情を浮かべていた。モースのあまりにも呆気ない最期に対して。
「ま、取り敢えずこれで借金取り達も含めてモース達に関しては片付いた事だし・・・後残るのは当人達だけだから、早目に行かなきゃ・・・」
そしてそのままハヤテはついでとばかりに借金取り達も殺した事を口にしつつ、部屋をさっさと後にしていく。この後に残るモノについてを片付ける為に・・・









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