殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

「どうしようかなぁ・・・正直もう潮時にしか思えないんだよな、色々な意味でここにいるのは・・・」
そうしてハヤテは潮時という言葉を口にすると共に、どうしたものかと考え込むように首をひねる。






・・・ヴァンが何か壮大なことをしようとしている。その事を知っていけばいくほど、ハヤテの中ではいつまでもダアトの中にいようというような気持ちは無くなっていった。前世なら何だかんだとゴタゴタしつつもそんな事は放っておけないと動いていただろうが、今のハヤテはそんな面倒事に首を突っ込んで解決しようという気持ちはない。あるのは真逆の面倒事に巻き込まれないで穏やかに暮らすことへの願いだ。

だがヴァンがモースにイオンの偽物を作ることを提案してそれを快諾した件は、ヴァンの目的を探りきれずに不透明な部分はあるものの遅くとも十年内には何か事が起きるのではないかとハヤテは感じていた。そうでなければフォミクリー技術を有していた上でそれをモースに使うかどうかを持ち掛ける理由などないというか、排除される可能性が低かっただろうと見たとは言え自らが持っている秘匿の技術を明かしたのだ・・・そうしたのはイオンの偽物が何かしらで必要になると見たのもあるのだろうが、フォミクリー技術を持っていると敢えて明かして使うかと持ち掛けたのはモースがヴァンを不審に思い行動を起こしてきても問題ないと思ったから・・・それこそ何かされたら逆に殺して終わらせるくらいの気持ちや考えがあるし、何か起こされなくてもいずれヴァンが何かを起こしてくるのではないかと。

そしてもしそうなればヴァンの行動の規模や目的にもよるが、フォミクリー技術によりイオンが偽物であることを明かされた上でモースがその騒ぎを沈静化出来ないどころか、ヴァンがモースを殺すといった事態になったとしたなら・・・ハヤテの目から見たらダアトが混迷の事態になることは火を見るより明らかであった。こんなことになってしまって誰がどうまとめるのかなんて事は最早些細なんて言葉では足りなくなる程の事態になることは。

そしてそんなダアトの激震は他国にまで波及はするだろうが、それでもダアトに居続けることはそのいずれの震源地にいることに他ならなくなり、親に後ろ楯を持たない自分がその煽りを受ける可能性が非常に高くなる・・・そうハヤテは考えたのだ。そういった非常事態の際に真っ先に狙われるのは弱い立場の者であると共に、いなくなっても問題がないと思われる者であって元は余所者の自分が確実だろうと。






「・・・うん、決めた。やっぱりもうダアトを出よう。そしてマルクトにでも行こう。キムラスカはなんかモースに謡将の影響が強いから、何かあったら嫌だしね」
それでそうして少し考えた所であっさりとダアトを捨て、マルクトに行くことをハヤテは決断した。前々から考えていたことであるからこそ、妙なことになる前に安全な場所に行こうというよう。
「となればやっぱり資金もそうだし、手土産もほしいな・・・ダアトの実態がこうだっていう情報があるならマルクトも無碍にはしないだろうし、そのマルクトの対応次第じゃモースもそうだし謡将の行動にも対応してくれるかもしれないしね」
だがそうすると即行でやるのではなく、手土産という言葉と共に冷静にマルクトに渡りをつけることを考えていく。ダアトが混迷に陥る可能性をマルクトが潰してくれることも期待して。
「よし、となればもう少し情報を集めていこう。マルクトが動いてくれる情報は多いに越したことはないしね」
だからこそうんと一つ頷き、更なる情報を集めるとハヤテは足を動かす。少しでもマルクトが動いてくれる材料を仕入れる為にと。









.
12/22ページ
スキ