殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

そのすぐに頷いたことに関してはモース自身の問題である部分もあるのは確かだが、その発案をそもそも持ってきたこともだがそんな技術を何故持っていたのかをハヤテは疑問に思ったものだった。オールドラントは剣に魔法のあるファンタジー世界だといったような感じではあるが、科学技術が全く発展してない訳ではないために元の世界に比べるとそこまでではないと言っても科学の産物はあることはある・・・しかしフォミクリー技術という元の世界で言うクローン技術を、実用出来る形で使えるようにした上でモースに導師のレプリカを作らないかと持ちかけてきたのである。

ハヤテもそこまで科学に詳しくはないがクローン技術の確立だけでもどれだけ難しいかくらいは雰囲気は感じていたし、裏では倫理観のない輩達が何かをやらかしていて実用可能にしてクローン技術を使っていた可能性も無くはなかっただろうが、少なくとも表では倫理的な見られ方をされていたのもあってクローン技術は発達はほとんどされてはいなかったと覚えている・・・そんな技術的に実用的にするには相応の時間が必要な難しい物という認識があるからこそ、ハヤテは少なくともモースに切り出す何年も前からヴァンがフォミクリー技術についてを研究していたのだろうと見ていた。

しかしモースがそれらを気にした様子がない理由に関しては簡単に予測が出来た。それはモースが基本的に都合のいい物しか信じることがないこともそうだが、技術を開発することにどれだけの時間や苦悩が必要なのかということなど知る気にもならないからだと・・・表向きは厳格だというように見られていると言ったが、その実としてモースはその性格もあって預言の実行さえ出来れば他のことなど知ったことではないと思っている上で、その当人がやれることなど言ってみればこうしたいからこうしろと居丈高に命令する事だけだ。

だからこそモースとしては都合のいい技術があるけれどどうしますかと持ち掛けられ、なら使おうと疑いだったり何故といった考えが浮かぶ余地など一切なく頷いたのだろうと見た。導師の血脈はもう今危篤状態であるイオン以外は全て死に絶えている事から、もし少ししてイオンが治療の甲斐なく死んだとしてそれを公表したならいくらローレライ教団であっても人心が離れていき士気が下がるのは避けられなくなる・・・それらを避けるにはヴァンの言葉に頷き、イオンの偽物を置くのが面倒を避けられると共に導師の血脈はまだ続くことになるからいいことなのだと勝手に考え。

だからこそモースは導師の偽物を置くことがメリットだけしかないといったような考え方をしているんだろうし、ヴァンに性格的に感謝はせずとも役に立つ手駒だと思っているのだろうが・・・その浅はかとも言えるような考え方に態度をヴァンが利用しないはずがないとハヤテは見たのだ。導師やフォミクリー技術の件だけではなくヴァンが何らかの怪しい行動をしていることはヴァンの配下の動きからも察しはついているし、前世での経験もあってヴァンの顔を見た時点でハッと感じたのである・・・ヴァンが表向きに見せている顔は対外的に取り繕った物であると共に、決して大多数の者達に誉められないようなことを目的として動くつもりなのだろうと。

これはハヤテ自身の経験と勘によるものがあるために、絶対にそうなると言える物ではなかった。だが時が経つにつれてヴァンやその直属の配下達の行動についてを知っていくにつれて、それが間違いではなかったと共に・・・主に騙されているモースもそうだが、いずれはダアトに住む者達に自分すら巻き込んで壮大な面倒事を引き起こしてくるのではないかとハヤテは見たのだ。そしてその時になればモース達は抵抗などヴァン達に頼りきってきたツケを払うような形で、ろくに出来ずに終わりを迎えるのだろうとも。









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