殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

「・・・はぁ、どうしようかな・・・ある程度予想はしていたけど、ここまでとは思わなかったな・・・というかある意味必然だったんだろうな。こうまでダアトの裏側が腐っているというか、取り返しのつかないことになってることは・・・」
・・・それでアニスと少し話をした後、ハヤテは夜になって孤児院の部屋に戻るのだがそこで微妙だというように表情を歪めていた。これからどうするかというよう。






・・・アニスの事から借金取りについてを調べていくことにしたハヤテだが、そもそもからして何故このダアトで金貸しに借金取りといった存在が普通に活動出来ているのかということが気になっていた。キムラスカのバチカルのスラムに関してはほぼ公然の秘密のようなものであったが、ダアトという場の事を考えれば借金を出来るような環境というのは社会の暗部には必要だとは言っても、そういった存在がいるという醜聞は望ましくない筈だ。

その辺りも含めてハヤテが借金取りの裏側についてを調べていこうと前世からの経験とスペックをフルに活用して誰にも悟らせずに動いていくのだが、そこで調べていく内に・・・金貸しに借金取りと密接な繋がりを持つのがローレライ教団のNo.2、いやトップである導師はまだ先代が死んだ上でその血を引いているというだけの十少し程度の子どもであってまともに運営に参加出来てないことから、実質的なトップとなっている大詠師のモースがいると判明したのだ。

これに関しては最初こそはどういうことなのかというようにハヤテも驚いた物であったが、驚きから冷静になって考えてみれば前世での両親の再度の借金までの時なら思い付かなかっただろうが今のハヤテは分かった・・・その借金をさせた相手の弱味を握った上でその都度その都度、何かやらせたいことがあればそれをやらせるための手駒にするための手段なのだろうと。

だがなんでそんな手段を取っているのかというか、モースに他に手駒はいないのか・・・そう考えていったハヤテだが、モースに従順というか使いやすい手駒がいることは確かではあるだろう。しかし従順だからモースに言われたなら例えとして、迷いの一片もなく死ねるかと言う輩ばかりかと言えばそうではなくむしろそんな命令を下し続ければ反感を買い、従順な部下はすぐにいなくなるのは避けられなくなる・・・そう考えればある程度近い位置にいていなくなられては困る部下より、さして近い位置におらずにその他大勢の中の誰かを適役に選んだ上で逆らえないようにしてしまえば、いざというときに使い勝手のいい捨て駒に出来る・・・そうモースというか、歴代のローレライ教団の首脳陣はそうしてきたのではないかとハヤテは考えた。そうでもなければ借金取りを存在させて取り締まらない意味がないというかリスクが高い上に、こんなやり方は一朝一夕に出来ることではないと。

その辺りに関してをモースの性格を考えてみれば考えていくほど、有り得ないという考えとは逆にむしろ納得がいくという気持ちがあった・・・よく当人を知りもしない上に話したこともない教団の信者達はモースの事を敬虔であり厳格な人物だと遠目に見るだけの姿や噂から話をしていたが、ハヤテはモースは自分の信じる物以外を信じないし都合の悪いものを受け入れる度量のない人物だとその人相や姿から判断していた。そしてとてもとても自分にとって弱味になるような人物との繋がりなど、利になるからといって何もなしに放っておくような剛毅な人物ではないだろうとも。

なのに何故そんな人物達を放っておくのか・・・それはその人物達がモースからしたなら確実に裏切るような事をしない者達である上で、似たような事を昔からやってきたからこそだとハヤテは見たのだ。それこそ何十年何百年と続いてきた鉄板のやり方だからこそ、モースと借金取り達は取り締まりをすることも取り締まられる事もなく持ちつ持たれつの関係を続けてきたのだと。そしてそれを前任者辺りから聞いた為にモースは借金取り達の事を信用とはいかずとも、何もしないのだと。








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