殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

今生での両親はそれはそれは誰にも分かりやすいクソ親だったとハヤテからして言えた。借金しても恥じることはないどころか金がなくなるのはお前のせいだとばかりにハヤテに理不尽な暴力を振るってくるし、金を返すように働けと自身らがしない家事までもを押し付けてきながら言ってくるのだ・・・これはまともな感性を持っているなら今生の両親だった存在がいかにクソかはすぐに分かるだろう。

ただ前世の両親にアニスの両親に関しては方向性が少し違うものの、本質的に言うなら同じような物であった。それは子どもに対して借金によって苦労をかけていることを、一切悪いと思っていないことだ・・・ハヤテの前世の両親は借金を自分達で返すことを考えずにハヤテが苦しんでるかどうかなど度外視して借金を更に増やしていったし、アニスの両親は話を聞いて実際に会ってみて分かったこととしては悪人に騙されて借金をさせられても、そんなにお金の必要のない自分達のお金が人の役に立てるならということでアニスも平然と巻き込んできているのである。アニス当人が何度も何度も止めてほしいといった言葉を本気で向けてきたにも関わらずだ。

そしてそういったアニスの両親に似たような者は規模は違えども他にもいることはハヤテは知っている上で、その両親が郡を抜いて規模が違うことに底抜けに人が良すぎるくらいに良いことで愚かだということは承知している・・・それこそアニス達三人のタトリン一家とある程度近い位置にいるなら、誰もが借金により極貧生活を送っていることや両親が全く堪えてないということを知っていることも。

ハヤテはそういったアニスの生活についてを周りから聞いて知ったが故に、自然に気を遣うよう声をかけていったし多く作った料理を密かにご馳走したことも何度もあった。ただ最初はアニスはそんなハヤテの行為に警戒というか余計なお世話だというように言ってきたものだが、まだ年齢にして十程度の子どもである上に優しいお兄さんといった態度で接してくる様子に次第に心を開いていった物だった。この辺りはやはり年の割に聡いとは言え子どもであると共に、誰か頼れる存在がいてくれるということが心地よかったのだろう。

それでそうしたことからアニスとの関係は良くなっていくのだが、ハヤテは対照的にその両親二人への気持ちが冷めていく上でクソ共だと断じ・・・そしてそういった事をその両親に対して仕掛けてくる借金取り達に対し、色々と思うところが出てきた事からダアトの裏を探ることにするきっかけにした。

・・・これに関してはハヤテは元々からダアトにローレライ教団が真っ白な組織というか場所だと信じきって行こうと決めた訳ではない。だが当時の自分がどこか別の場所に行こうとしても他に安全と言える可能性の高い場所など想像出来なかった上、こちらでの両親達を殺したばかりで他に悠長に考えていられる時間などほぼ無かったのだ。だから見込み違いだったら逃げ出してしまえばいいという気持ちでダアトに来たのであり、そして孤児院で暮らす中で自分に険が及ばないと思ったが為に結構な時間を過ごしてきたのである。

ただそうして暮らしていく中でアニスと知り合っていってその苦悩についてを知っていったことで、ハヤテはこのダアトにローレライ教団についてを調べていこうと思ったのだ・・・アニスに対する善意からというだけではないし、絶対にダアトが綺麗なだけの所ではないと承知はしていた。だがここまで来たからには自分が将来的に可能性としてダアトを逃げ出すことも選択肢として考えなければならないかもと思い、ハヤテは教団の裏を探ることにしたのである。









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